イランでは、6月の大統領選挙で当選した反米・保守強硬派のライシ師が、日本時間のきょう、新大統領に就任します。アメリカとの間で、立て直しに向けた間接協議が続けられてきた「イラン核合意」がどうなるのかが注目されます。
出川解説委員です。
Q1:
ライシ師が、まさに大統領のいすに着こうとしていますね。
A1:
はい。国際協調派のロウハニ現大統領から、反米強硬派のライシ新大統領に交代することで、アメリカとの交渉や対話は、今まで以上に難しくなるでしょう。ただし、それによって、ロウハニ政権の遺産とも言える「核合意」が、直ちに崩壊に向かうとまでは言えません。「核合意」は、イランが核開発を大幅に制限する代わりに、アメリカなどが、イランに対する制裁を解除する内容です。
Q2:
「直ちに崩壊には向かわない」のは、なぜでしょうか。
A2:
ライシ新大統領も、外交の最終決定権を握る最高指導者ハメネイ師も、アメリカのトランプ前政権が科してきた強力な経済制裁を解除させることを最大の目標としています。「核合意」の崩壊は望んでいません。ですから、アメリカへの強い不信感を表明しつつも、制裁解除を目指して、バイデン政権との間接的な協議を続けてゆく方針とみられます。ただ、イラン側の交渉チームは交代し、これまでより強硬な姿勢で協議に臨むことが予想され、結局、妥協点を見いだせずに、「核合意」が崩壊してしまう可能性もあります。
Q3:
核合意が崩壊するとどうなりますか。
A3:
もし、核合意が崩壊しますと、イランの核開発に歯止めがかからなくなり、敵対するイスラエルも巻き込んで、ペルシャ湾岸地域の軍事的緊張が高まります。それだけに、核合意を崩壊させてはならないという意思を、改めて、国際社会全体で共有する必要があります。また、イランとアメリカの直接交渉が望めない現状では、EU・ヨーロッパ連合などの仲介がとても重要です。イランは核合意への違反行為をやめる。アメリカは制裁を解除する。これを同時、かつ、段階的に進めてゆくアプローチが必要だと思います。ライシ新大統領が、就任演説で、核合意について、どんな発言をするかが注目されます。
(出川 展恒 解説委員)
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