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広がるかワクチン接種義務化

二村 伸  解説委員

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、ヨーロッパやアメリカなどではワクチン接種を義務化する動きが見られます。

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Q1. ナポレオンならぬマクロン大統領ですね。

はい。ナポレオンの有名なアルプス越えの絵は、敵との戦いに向けて荒馬を冷静沈着に乗りこなす姿が描かれています。新型コロナに立ち向かうマクロン大統領も同じ心境かもしれません。大統領は今月12日、病院や高齢者施設などで働く職員にワクチン接種を義務付けると発表しました。「すべての国民が接種を受けることが普通の生活に戻る唯一の方法だ」として、9月15日までに接種しない職員には給与を払わないなど厳しい措置をとることにしています。さらに一般市民にもカフェやレストラン、病院などに入る際にワクチンを接種したか検査で陰性だったことを示す証明書の提示を義務付ける方針で、来週、憲法違反かどうかを審査する憲法評議会で認められれば直ちに実施に移されます。

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Q2.厳しい措置ですが反対の声はないのですか?

自由を重んじる国だけに反対の声が上がり、各地で抗議デモが起きています。ただ、新型コロナの新規感染者が1日に2万人と、この1か月で10倍に増え、「接種を拒否するのは無責任だ」とする大統領の対応を国民のほぼ半数が支持しています。

Q3.ほかにもワクチン接種を義務化している国はあるのですか?

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イタリアやギリシャは医療従事者や介護施設の職員などに接種を義務付けています。また、アメリカでもニューヨークの市と州、カリフォルニア州が職員のワクチン接種義務化を発表し、ワクチンを受けられない事情がある人には週1回の検査を求めることにしています。28日にはグーグルやフェイスブックといった大手IT企業も、アメリカ国内の全従業員に接種を義務付ける方針を発表しました。日本ではワクチン接種は努力義務、つまり任意ですが、世界ではワクチン接種率が伸び悩むにつれて接種を義務化する動きが広がることも予想されます。とはいえ、義務化までしなくても多く人がすすんで受けるように各国の知恵が試されているのではないでしょうか。

(二村 伸 解説委員)


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二村 伸  解説委員

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