防衛省が、気候変動など環境問題への対応に本腰を入れ始めました。
Q)何やら忙しそうですね。
A)防衛省は今、内外ともに環境問題に目を向ける必要があるとしています。
今月公表された今年の防衛白書でも、「気候変動」と「環境問題」に関する項目を新たに設けました。
Q)内外というのは?
A)外に目を向ければ、気候変動が地域の安全保障に影響を及ぼすとの考えが広がっています。例えば氷が減少している北極海。航路の利用などに関心が高まる中、沿岸国のロシアは軍事活動を活発化させていて、自由な航行の確保といった点で日本も無関心ではいられません。
一方、内に目を向ければ、土石流が起きた静岡県熱海市でも活動している自衛隊の災害派遣。豪雨災害などで近年、延べ100万人以上が動員される年もあり、防衛省は今後さらに派遣が増えれば訓練が十分にできず隊員の能力が低下する懸念もあるとしています。
さらに足元に目を向ければ、全国の自衛隊基地などで使う電力。関連施設の使用量は政府全体の4割に上り、昨年度から再生可能エネルギーの導入も
進めています。どの対応も必要ながら難しい課題と言えます。
Q)安全保障の問題を、環境という観点から考えるのが重要になってきているのですね。
A)実はそれらに加え、基地周辺の環境を守れるのかという問題も持ち上がっています。基地などで使われている消火剤、それに含まれる「PFOS」という有機フッ素化合物について有害性が指摘されたため、現在全国で処分を進めています。しかし今年2月、沖縄県の那覇基地から基地の外に流出する事故が起き、地元では抗議の声が上がりました。防衛省はこうした問題を一元的に担う環境政策課を今月、設置しました。実に広範囲に、様々な問題を扱うだけに「看板」だけとならないか、成果を積み上げていけるのか注目していきたいと思います。
(田中 泰臣 解説委員)
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