中東のイランでは、「核合意」を実現させた穏健派のロウハニ大統領の任期満了にともなって、18日、日本時間のきょう、大統領選挙の投票が行われます。保守強硬派のライシ師が選ばれる可能性が高いと見られています。出川解説委員です。
Q1:
大統領選のレース、ライシ師が、ダントツで先頭を走っていますね。
A1:
はい。世論調査では、保守強硬派のライシ師が、他の3人の候補を大きく引き離しています。背景には、イラン特有の選挙制度があります。今回、600人近くが立候補を申請しましたが、最高指導者、すなわち、この国のすべての権力を握る実力者の意向を汲む「護憲評議会」による資格審査が行われ、7人だけが立候補を認められました。
その際、ライシ師のライバルとなりそうな人物は、すべてスタート前にふるい落とされ、さらに、投票日直前に、3人が立候補を辞退しました。イランの大統領選挙、過去には「番狂わせ」も起きましたが、今回はなさそうです。
Q2:
当選が有力というライシ師は、どういう人物ですか。
A2:
位の高いイスラム法学者で、現在60歳です。司法府の代表、つまり、この国の司法機関を統括する地位にあります。政治的には、イスラム革命の原則を固く守り、反米の立場をとる保守強硬派に属し、欧米との対話や国際協調を重視した穏健派のロウハニ大統領とは、対照的です。
最高指導者のハメネイ師は、ライシ師に大きな信頼を寄せています。自らの有力な後継者として見ているのではないか。何としても勝たせなければならないと考え、資格審査などで、選挙をコントロールしたのではないか。多くの専門家は、このように見ています。
Q3:
ライシ師が大統領になると、イランの外交はどう変わるでしょうか。
A3:
就任は8月ですが、反米強硬派の大統領と政権が誕生すれば、アメリカと対話や交渉を進めてゆくのは、これまで以上に難しくなるでしょう。ロウハニ政権とバイデン政権との間で、「核合意」の立て直しを目指し、間接的な交渉が続けられてきました。ライシ師も、制裁解除に全力で取り組む考えを示していますが、当然、交渉のハードルは高くなり、「核合意」の復活はいっそう困難になると考えられます。
イスラエルやサウジアラビアとの対立も絡んで、中東地域の緊張が高まることが懸念されます。
(出川 展恒 解説委員)
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