イスラエルで、長年、政権を維持してきたネタニヤフ首相の続投に反対する政党による新たな連立政権が誕生する見通しとなり、中東情勢への影響が注目されます。出川解説委員です。
Q1:
ネタニヤフ首相、リング上で、ノックアウト寸前ですね。背景に何があったのでしょうか。
A1:
ネタニヤフ首相は、自らの汚職問題で、退陣を余儀なくされそうです。収賄や背任など、少なくとも3つの罪で、現在、裁判中です。その影響で、3月の総選挙の後、連立協議と組閣に失敗しました。そして、ネタニヤフ氏の続投に反対する8つの政党が、つい先ほど、連立政権をつくることで合意しました。ネタニヤフ首相は、通算で15年と、イスラエルでは史上最長の在任中、何度も政治的な危機を乗り越えてきましたが、ついに、この日が来たようです。連立を組んだ政党とケンカ別れを重ねたことも、連立協議に響きました。
Q2:
政権交代となった場合、どうなるでしょうか。
A2:
新たに発足する見込みの連立政権は、極右政党から、右派、中道、左派、さらには、アラブ系の政党まで加わった、主義主張が全くバラバラの「寄り合い所帯」です。首相ポストは、まず、極右政党の党首ベネット氏が2年務め、そのあとの2年を、中道政党の党首ラピド氏が務めることで合意しています。1週間以内に、議会で過半数の61票以上の信任が得られれば、正式に発足する運びです。「ネタニヤフおろし」の1点だけで集まった連立政権とも言え、遠からず、内輪もめが起きて、短命に終わる可能性もあります。
Q3:
今後の中東情勢に、どんな影響が出るでしょうか。
A3:
「パレスチナ国家」の樹立に強硬に反対してきた、極右のベネット氏が首相に就任することについて、パレスチナ側は、強い懸念や警戒感を示しています。中断したままの和平交渉の再開は、まず期待できません。また、核開発を加速させているイランに対する強硬な政策も、基本的に引き継がれると考えられます。ですから、中東地域の緊張が、直ちに和らぐことはないと思います。
異例ずくめの連立政権が、はたして正式に発足するのか、パレスチナや近隣諸国との関係はどうなるのか、当分、不安定な政治状況が続きそうです。
(出川 展恒 解説委員)
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