アンモニアによる発電を日本発の脱炭素技術にしようと、大規模な実証試験が今月から始まる。水野倫之解説委員の解説。
アンモニアというと理科の実験での強烈なにおいを思い出す人もいるかもしれないが…。
その多くは畑の肥料として使われる身近な物質で、輸送や貯蔵も比較的容易。
これを、東京電力と中部電力の火力を統合した電力会社JERAが、愛知県の碧南石炭火力発電所で、燃料として使う世界でも初めての実証試験を今月から始める。
アンモニアは水素と窒素の化合物で燃やしてもCO2が出ないのが特徴で、脱炭素化に貢献する次世代エネルギーとして日本が着目し研究を進めてきた。
というのも日本は電力の30%以上をCO2を多く排出する石炭火力発電所に頼り、将来の廃止を決めたヨーロッパなどからの風当たりも強く、2050年温室効果ガスゼロに向けていかに石炭利用を減らすかが課題。
政府は2050年にアンモニアと水素で電源の10%を賄うことを参考値として掲げて試験を支援しており、今回は重要な一歩。
試験は発電所の設備をそのまま使うが、点火バーナーだけはアンモニア用に置き換える必要。JERAではIHIと協力して今月から設置作業を進めて夏に小規模な試験を行い、3年後にアンモニアの比率を20%に高めて安定的に燃やせるか確認。
そして2040年代までに100%にしてCO2ゼロを目指す。
ただ課題も多い。
現状アンモニアは天然ガスなど化石燃料から作られていてその過程でCO2が出るので、それを回収したりCO2を出さない製造方法を確立するという大きな課題あり。
また流通量も少ないため、世界規模で生産体制の拡大を働きかけていくことも必要。
このように課題は多いが、ほかの大手電力も今後使う方針で、アンモニア発電を日本発の脱炭素技術に育てることができるのか、今回の実証試験に注目。
(水野 倫之 解説委員)
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