参議院広島選挙区の買収事件をきっかけに有罪判決などで失職した国会議員の給与にあたる歳費を返納できるようにするため、与野党で法改正に向けた議論が行われています。
Q)どうして今、この議論なのですか?
A)この事件で有罪が確定し当選が無効になった河井案里元参議院議員があわせて4900万円余りの歳費などを受け取ったままになっている、このことへの世論の反感は強いのです。先月には、広島県の住民が、案里氏に歳費を全額返納させるよう国に求める訴えを起こしました。
Q)どうして法改正が必要なのですか?
A)今の法律では、不祥事を起こした国会議員に歳費などの返納を求める規定はありません。自主的に返納したら公職選挙法で禁じられた寄付にあたる可能性もあるのです。
そこで、与党の公明党は、法改正を行うべきだとして法案の骨子をまとめました。▽起訴されたら歳費の4割とボーナスにあたる期末手当の全額を支給停止し、さらに▽当選無効になった場合には支給された歳費の4割にあたる額の返納を義務づけるなどとしています。自民党もこの案をもとに議論する方針です。
Q)与党の方が積極的なのですか?
A)そうですね。というのも選挙への危機感があるからです。先月行われた参議院広島選挙区の再選挙では、強固な保守地盤にも関わらず自民党の候補が敗れました。衆議院選挙の前に政治とカネの問題に対応せざるをえないという状況もあったのです。
一方、野党も、立憲民主党が法整備の検討を進めています。
Q)法改正は実現しそうですか?
A)簡単ではありません。例えば、憲法との整合性です。憲法は「議員は、国庫から相当額の歳費を受ける」と規定しており、歳費には「議員の地位や生活保障」という意味合いもあります。また、当選が無効になってもそれまでの議員活動まで無効になる訳ではありません。公明党の案が全額返納ではないのは、こうした事情もあるとみられます。
歳費の返納をめぐる議論は議員の不祥事の度に繰り返されてきたという背景があります。それだけに今回、どこまで議論が進むのか注目です。
(権藤 敏範 解説委員)
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