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米朝協議 再開はあるのか?

出石 直  解説委員

バイデン大統領は先週末、韓国のムン・ジェイン大統領と会談し、北朝鮮との対話を通じた努力を続けていく方針を確認しました。中断している米朝協議は再開に向けて動き出すのか。出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。

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Q1、きょうのイラストは山登りですね。

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A1、「朝鮮半島の完全な非核化」という頂上を目指す山登りに例えてみました。
トランプ前大統領はこの険しい山を一気に登ろうとして途中で力尽きました。
バイデン大統領は、いきなり頂上を目指すのではなく「急がば回れ」、少しずつ山道を切り拓いていく作戦のようです。

Q2、一方のキム・ジョンウン総書記は高みの見物のようですが、果たしてアメリカとの協議に応じてくるのでしょうか?

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A2、簡単ではありません。北朝鮮はことし1月に開いた朝鮮労働党の党大会で、弾道ミサイルの開発など核武力をいっそう強化する方針を打ち出しています。これまでのところアメリカからの協議の呼びかけにも一切応じていません。ただバイデン大統領も、いきなりトップどうしで会うつもりはないようです。実務者レベルの協議で進展がない限りキム総書記と会うつもりはないと断言しています。

Q3、菅総理大臣やムン・ジェイン大統領も一緒にこの山を登るのですね。

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A3、そこがポイントです。過去には「6か国協議」、オバマ政権の「戦略的忍耐」、トランプ政権の「トップ会談」と、北朝鮮との非核化交渉はいずれも失敗に終わりました。こうした反省を踏まえてバイデン政権は、アメリカ単独ではなく日本、韓国と連携して北朝鮮に完全な非核化を迫ろうとしているのです。

Q4、しかし日米韓の連携とはいっても日本と韓国との関係は冷え切ったままですよね。

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A4、南北の融和が最優先のムン・ジェイン政権と、核・ミサイル問題に加え拉致問題も進展させていかねばならない日本とでは、北朝鮮に対する脅威認識やアプローチの仕方がかなり異なります。朝鮮半島の完全な非核化という大きな目標に向かって、日米韓の足並みを揃えることができるかどうかが今後の課題です。

(出石 直 解説委員)


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