WHO=世界保健機関が来週から開く年次総会で、組織の改革に向けた議論がどこまで進むかに注目が集まっています。髙橋解説委員です。
Q1)
けさのイラストは、WHOのテドロス事務局長の執務室?
A1)
世界194の国々が加盟するWHOは、来週から「世界保健総会」と呼ばれる年次会合をオンライン形式で開きます。ここで専門家による独立委員会は、おととし12月に中国・武漢で症例が確認されて以来、新型コロナへの対応を検証してきた最終報告書を提出します。「パンデミックを2度と繰り返さないため」として、改革の断行を勧告するのです。
Q2)
どんな改革を勧告するのでしょうか?
A2)
たとえば、加盟国の同意なしにWHOが感染情報を迅速に公表できるような権限の強化、ワクチンの公平な分配に向けた協力、資金拠出をめぐる制度の見直しや、新たな感染症に備えた枠組み条約の締結などです。
すでにアメリカのバイデン大統領は、ワクチン少なくとも8000万回分を来月にも各国に無償で供与するとしています。「アメリカこそが指導力を発揮してWHOの改革をけん引する」と言うのです。
Q3)
そうした改革が期待される一方で、テドロス事務局長が浮かない表情なのはなぜですか?
A3)
台湾にオブザーバーの資格で総会への参加を認めるかどうかで去年に続き対立があるからです。アメリカは「感染症対策に空白を作ってはならない」として、日本などほかのG7メンバーとともに、台湾のオブザーバー参加を後押ししています。これに対して、中国は「内政干渉」を理由に断固反対の立場を崩していません。いわば板挟みとなったテドロス事務局長は、「加盟国が決める問題だ」との理由で、今回も台湾を招待していないのです。
しかし、WHOは、人種や宗教、政治信条や経済的、社会的な条件で差別されることなく、「すべての人々の健康増進」を目的に設立された組織です。今こそ原点に立ち返り、政治的な駆け引きよりも人命と安全を最優先に、台湾を排除せず、改革の着実な実行を求めたいと思います。
(髙橋 祐介 解説委員)
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