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人材確保の切り札?"自衛隊新卒"

田中 泰臣  解説委員

少子化による人手不足、多くの業界で深刻で自衛隊も例外ではありません。こうした中、防衛省は人材確保策の一環として自衛隊新卒というのをPRしているそうです。

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Q)自衛隊新卒というのは?
A)自衛官としての任期を終えて民間企業に就職することで防衛省が中途退職
と、誤解されないよう去年から使い始めたものです。

Q)企業への就職を後押ししているようにも聞こえますが?

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A)その通りです。毎年採用される自衛官の約半数が任期制自衛官という
1年9か月か2年9か月のいわば期限付きで採用されています。任期は延長も可能なのですが、防衛省は任期を終える自衛官の就職を支援しています。支援を希望した陸上自衛官で、この春就職したのは1100人あまり。運輸業や製造業など多岐にわたり就職率は99.7%に上っています。企業からは、規律正しくチームワークを大切にすると評価が高いそうです。

Q)任期は延長も可能なのに人出不足の中、就職を支援するというのは?

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A)自衛隊を経てからの方が就職するのにも有利だとアピールし、自衛官の志願者を増やそうというのが防衛省の狙いです。志願者数は年々減っていて必要な定員には達していない一方、中国の台頭で周辺の安全保障環境は厳しさを増しています。期限付きであっても、若くて必要な人員は確保したいというものです。

Q)それだけ人材確保に苦労しているということ?

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A)そうですね。ただもちろん、この取り組みだけでは難しい面があります。自衛隊には、艦船の乗組員や、宇宙・サイバーといった分野への対処など、長期間の育成や専門性が必要な業務もあります。このため防衛省は、定年の引き上げや待遇・勤務環境の改善といった取り組みもあわせて行っています。人材確保にはやはり量と質、その両方が重要で、それは自衛隊にとっても難しい課題となっています。

(田中 泰臣 解説委員)


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