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動き出した"ポスト・メルケル"

二村 伸  解説委員

今年9月に総選挙が行われるドイツで、政界を引退するメルケル首相の後任の座をめぐる戦いが熱を帯びています。二村解説委員です。

Q1.後任争いは接戦のようですね?

はい。先頭を激しく争っているのが、野党・緑の党のアナレーナ・ベアボッグ氏と、与党・キリスト教民主同盟のアルミン・ラシェット氏です。ドイツでは各党が首相候補を立てて総選挙に臨みますが、1日に続いて6日発表の世論調査でも緑の党が20%代後半でトップに立っています。ベアボック氏は党の共同代表の1人で40歳、政府の要職についた経験はありませんが、32歳で連邦議会議員となり、温暖化対策や外交・安全保障などを担当してきました。対するラシェット氏は、日本の企業が多数進出しているデュッセルドルフなどを抱えるドイツで最も人口が多いノルトライン・ヴェストファーレン州首相を務める60歳のベテラン政治家で、メルケル路線の継承者としてことし1月、党首に就任しました。3番手は連立与党の一角、社会民主党のショルツ財務相です。

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Q2.与党の支持率が低迷しているのですね。

そうなんです。メルケル首相が所属するキリスト教民主同盟は、新型コロナの感染拡大やワクチン接種の遅れへの不満などから支持率が落ち込み、先の地方選挙でも議席を大きく減らしました。これに対して緑の党は、地球温暖化対策への関心の高まりとともに、他党の首相候補より若く女性のベアボック氏の擁立したことで前回選挙を大幅に上回る支持を得ています。16年におよぶ長期政権からの変化を望む声も緑の党の支持率を押し上げているようです。

Q3.このままいけばメルケルさんに続いて女性首相が誕生する可能性もあるのですね。

総選挙まで4か月半あるのでまだわかりませんが、緑の党が第1党になればその可能性が高く、キリスト教民主同盟が第1党の座を維持したとしても単独では過半数に届かないため緑の党が政権に参加する可能性があります。

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また、緑の党が社会民主党、自由民主党と3党で連立を組むことも考えられます。そうなれば党の色が緑、赤、黄色となり、「信号連立」と呼ばれます。メルケル後のドイツは、どんな色の試験ができるのか、また誰がそのかじ取り役を担うのでしょうか。

(二村 伸 解説委員)


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