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米軍撤退延期 アフガン和平の行方は

二村 伸  解説委員

アメリカのバイデン大統領は、14日、ホワイトハウスで演説し、アフガニスタンに駐留するアメリカ軍を同時多発テロから20年となることし9月11日までに撤退させることを正式に表明しました。

Q1.9月11日の撤退ということはこれまで予定されていた来月1日の撤退完了を延期するということですか?

はい。早期撤退を公約に掲げたトランプ前政権が去年、反政府勢力タリバンとの間で、来月1日までにアメリカ軍を中心とした外国軍部隊をすべて撤退させることで合意しました、しかし、合意はアフガニスタン政府抜きだったため、撤退の前提であるアフガニスタン政府とタリバンの和平交渉が進展せず、テロや戦闘がおさまっていません。そこで退期限の延期に踏み切ったわけですが、同時多発テロからちょうど20年を迎える9月11日としたのはアフガニスタンのためというよりアメリカのための撤退を意味します。

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Q2.いぜんアフガニスタン政府とタリバンはにらみ合いを続けていますね。

馬に乗ってヤギを奪い合うアフガニスタンの国技がありますが、まさに政府とタリバンは権力の座をめぐって一歩も引く気配がありません。ガニ大統領はアメリカが提案したタリバンも参加する暫定政権の樹立に反対し、あくまでも選挙を経て新しい政権を発足させるべきだとの立場です。20年前、国際テロ組織アルカイダをかくまっているとして力づくでタリバンを政権から引きずり下ろしたアメリカは今、「史上最長の戦争」と呼ばれるアフガニスタンの泥沼から抜け出すため皮肉にもタリバンの復権に力を貸そうとしているのです。しかし、タリバンは合意通り来月1日までの撤退を求め、アメリカの発表に反発を強めています。

Q3交渉がまとまらないとどうなってしまうのですか。

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バイデン政権は9月には状況にかかわらず完全撤退する方針です。中国やロシアとの緊張が高まる中、これ以上アフガニスタンにエネルギーを費やしたくないためですが、将来への見通しが立たないまま撤退すれば内戦が続いた20年以上前に後戻りしかねません。アフガニスタンは山を越えれば主が異なる、まさに群雄割拠の状態で、現地の事情を無視して和平を強いても無理だと当時も感じました。復興に向けた日本をはじめとする国際社会の20年間の取り組みが水泡に帰することのないようアメリカをはじめすべての当事者は和平の実現に責任をもって取り組んでほしいと思います。

(二村 伸 解説委員)


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二村 伸  解説委員

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