熊本地震から5年。避難所の課題について、二宮解説委員とお伝えします。
Q)左側の熊本地震の避難所のイラスト、人でいっぱいですね。
A)当時、熊本県内の避難者は18万人を超え、益城町ではおよそ1万6000人、人口の半数が避難しました。避難所は廊下にまで人があふれ、車や庭先のテントで避難生活を送る人も相次ぎました。
Q)コロナ禍の今は、これまで以上に混雑しないようにする必要がありますね。
A)はい。感染対策を徹底するには、これまでの3倍のスペースが必要とされています。
このため、全国の自治体が、地元のホテルや旅館に対して、持病のある高齢者や障害者、妊婦の避難先にできるよう協力を求めています。民間企業の会議室や駐車場を、避難所に使わせてもらう連携も広がっています。
Q)避難所を増やして3密を防ごうということですね。
A)しかし、避難所が増えると、運営する職員の人手が足りなくなってしまいます。
そこで、地元だけではなく、遠くとの連携も進んでいるのです。
ペアに決まった自治体が応援職員を派遣したり、足りない物資を送ったりします。
これは、「対口(たいこう)支援」と言って、2008年の四川大地震での中国のやり方を参考にしました。
日本では、「カウンターパート方式」とも呼ばれ、3年前、国の制度として正式に導入されました。
その年の西日本豪雨では、岡山県総社市を、東日本大震災をきっかけに交流していた仙台市が支援するなど、本格化しました。
Q)決まった自治体を支援するのは、どういうメリットがあるのですか?
A)迅速に応援職員を派遣できるほか、「顔の見える関係」になることで、より被災地のニーズにあった職員や物資を送ることが期待できます。
今は、派遣された職員が感染していないかなど、慎重な運用も必要ですが、次の災害に備えて、こうした遠近両面の連携がもっと広がってほしいと思います。
(二宮 徹 解説委員)
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