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ロシア外相イラン訪問 ねらいは

安間 英夫  解説委員

ロシアのラブロフ外相が13日、きょう中東のイランを訪問します。
ラブロフ外相は先月から中国、インドなどを訪問し、外交を活発化させています。
ロシア外交のねらいについて聞きます。

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Q1)プーチン大統領が地図を前にアメリカのバイデン大統領と向き合っているようですが。

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A1)
ロシアの外交の動きはアメリカを意識したものなので、駆け引きをゲームに例えてみました。
ラブロフ外相がきょう派遣されるイランをめぐっては、先週から、アメリカが前のトランプ政権時代に離脱した核合意に、バイデン政権が復帰することに向けた協議が始まりました。
アメリカとイランが対立する中、このタイミングでラブロフ外相が訪問するのは、イラン側の主張を聞いて協議に反映し、外交的な存在感を高めたいという思惑があります。

Q2)そしてラブロフ外相は中国も訪問したのですね。

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A2)
先月、アメリカと中国が激しくやり合った直後のタイミングでした。
ロシアが警戒しているのが、バイデン政権が中国だけでなくロシアに対しても人権状況を問題視する外交を展開しようとしていることです。
中国とロシアは、内政干渉は容認できないという立場で一致し、足並みを揃えてアメリカに対抗していくねらいがあります。
さらにラブロフ外相は先週、インドも訪問しました。

Q3)インドを訪問したねらいは?

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A3)
インドをめぐっては、アメリカが日本、オーストラリア、インドの4か国で、「クアッド」という枠組みで、中国包囲網とも受け止められる連携を強めようとしています。
ロシアも自国がその対象になっているとして警戒感を示していて、インド訪問では、ロシア製の地対空ミサイルを納入することなど、軍事分野での協力を高めていくことで一致しました。
伝統的な友好国のインドを引き止め、「クアッド」をけん制するねらいがあると見られます。

こうしたロシアの一連の動きには、アメリカの一極支配に反対する立場から、バイデン政権の外交攻勢に「思うようにはさせない」と、手を打っていこうとするプーチン政権の姿勢が見て取れます。
プーチン大統領の駆け引きは、このあとも続いていくことになりそうです。

(安間 英夫 解説委員)


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