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半導体不足 より深刻に

櫻井 玲子  解説委員

日本の大手半導体メーカーの工場で火災が発生したことなどを背景に、世界的に半導体が足りない状況が長引き、影響が広がっています。
櫻井解説委員です。

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Q 以前も「半導体が足りなくてクルマが作れない」という話をお伝えしましたが、状況はもっとひどくなっているんですか?

A はい、自動車メーカーにとっては泣きっ面に蜂といったところです。クルマ用の半導体で世界トップシェアを誇る「ルネサスエレクトロニクス」の工場で火災が発生し、元の水準に戻るまでに3か月以上はかかるということです。ルネサスは国内の別の工場で代替生産をすすめる考えです。が、デジタル化が急速にすすみ、新型コロナで巣籠り需要も高まる中、クルマ・パソコン・スマホを作るのに不可欠な半導体の、世界的な争奪戦が続いています。火災はそうした状況に追い打ちをかけた形です。

Q 今後の影響が心配ですね。

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A そうですね、2つの面で特に心配です。
一つは日本経済全体への影響です。日本は、今、コロナの影響で観光・飲食といったサービス業が打撃を受け、製造業が景気を支えています。自動車や部品メーカーなど関連業界の業績が悪くなれば、その分、景気回復も鈍ることになります。

Q もう一つの心配はなんですか?

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A 実はクルマだけでなく、スマホや複写機など、他の製品向けの半導体もここにきて不足してきています。このため企業の中には、値上げに踏みきる動きもみられます。今後、私たち消費者が商品を手にする時期が遅くなったり、値段が高くなったりするおそれもあります。影響を最小限にするためにも、半導体が安定して手に入るよう、対応する必要があります。

Q どういう対策をすればいいんでしょうか?

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A 世界をみると、各国ともに、生産能力の拡大に力を入れています。政府の支援を受け、アメリカのメーカー「インテル」は2兆円、台湾の「TSMC」は11兆円にものぼるとみられるケタ違いの投資をし、生産を強化します。また、来週行われる日米首脳会談でも、半導体の安定供給を巡る協力が、議題の一つとなる予定です。日本も、デジタル化の根幹を支える半導体産業の強化を、本気ですすめるべきだと思います。

(櫻井 玲子 解説委員)


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櫻井 玲子  解説委員

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