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東日本大震災10年 夢見た未来の今は?

二宮 徹  解説委員

東日本大震災からまもなく10年がたちます。
復興と被災者の今について、二宮徹(とおる)解説委員とお伝えします。

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Q1・このイラスト、防潮堤や新しい建物ができていますね。
A1・復興と被災者の現状を人の列や表情で例えました。
岩手・宮城の被災地は、高台の造成などがほぼ終わり、水産関係の新工場や災害公営住宅など、インフラや住まいの復興がかなり進みました。
一方、家族を亡くしたり、仕事や生きがいを失ったりして、歩き出せない人もいます。
福島は県内外で3万6000人が避難生活を続けています。

Q2・新しい街はできたけれど、それで復興したというわけではないのですね。
A2・問題は、今の状況が夢見ていた未来なのかどうかです。
こちらは5年前、震災5年のこのコーナーで、私が解説したイラストです。

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当時は、完成した災害公営住宅がほぼ半分、高台が3割程度でした。
仮設住宅から新居に移る人が増えた頃で、ほっとした表情や希望の笑顔で表しました。
 ところが今は、様子が少し違います。

Q3・災害公営住宅のおばあちゃんなど、元気がなさそうですね。
A3・はい。思い描いていた復興との差に戸惑っている様子を表しました。
災害公営住宅では、支援や地域のつながりが減って、孤立を感じる高齢者が課題になっています。
街も、高台の造成やかさ上げに長い年月がかかったことなどで、待ちきれない人たちが流出し、空き地が目立っています。

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さらに、新型コロナの影響で、観光などの地域経済が打撃を受けていますが、特に水産関連は、ここ数年、サンマやサケの水揚げが落ちているうえ、コロナ禍で居酒屋などの需要も減って、苦しんでいます。
復興の歩みは今、さまざまな不安や孤立に直面しています。
地域産業やコミュニティーの再生など、引き続き支援が求められます。

(二宮 徹 解説委員)


【取材後記】

5年前、被災地はまだ多くの被災者が狭い仮設住宅での不自由な生活を送っていました。
私はその後、震災から6・7年の2年間、盛岡で勤務しましたが、高台移転や災害公営住宅への入居がさらに進んで、笑顔が増えてきたのが印象的でした。
10年の今、笑顔で暮らしている人はもちろん大勢いますが、「災害公営住宅は隣が在宅しているかもわからず、知り合いも少ないので寂しい」、「空き地ばかりの街を見ていると、地域の未来が不安」など、元気の少ない方が増えたように感じます。
新型コロナの影響は被災地でも大きく、観光や水産関連、外食などの苦境が続いています。
次にこのテーマで解説するときは、人々に笑顔が、街ににぎわいが増えていることを願っています。

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