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人も動物も環境も 気になる"ワンヘルス"

土屋 敏之  解説委員

◆新型コロナウイルスの感染拡大と共に、「ワンヘルス」という言葉が注目されているという。

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 ワンヘルスとは、「人と動物の健康、さらには環境や生態系は関わり合う“1つの健康問題”だ」という考え方です。人間の命をパンデミックから守るためにも、動物の感染症対策や自然環境を守ることも重要だと、最近、国際的に重視されるようになってきました。

◆人間の病気を防ぐのに動物や環境が重要?

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 新型コロナではミンクなど動物も感染することが話題になりましたが、実は人間の感染症の多くは、他の動物もかかる共通の感染症(人畜共通感染症)です。近年次々現れたエボラ出血熱やSARS、新型インフルエンザなども野生動物に由来したり、動物が媒介して広がったと考えられます。
 そして、森林破壊や地球温暖化などで生態系が悪化し動物が住処を追われるなどして人と接触する機会が増えれば、未知のウイルスが広がりやすくなりますし、野生動物をペットにすることも感染リスクになります。
 また、畜産業などで世界的に抗菌薬・いわゆる抗生物質の使用が急増し、薬が効かない耐性菌ができて、それが人間の治療でも薬が効かなくなる問題につながっています。
 自然環境と家畜の間で言うと、いま各地の養鶏場で猛威を振るっている鳥インフルエンザは渡り鳥が運んで来たと見られます。
 こうしたことから、ワンヘルスの考え方が注目されるようになっています。

◆こうした問題を解決していくためには?

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 専門家からは、野生動物の間に広がっている病気を世界的に監視したり、生きた野生動物の国際取引を規制することなどが提言されています。
 また身近な所ではペットに顔をペロペロなめられるなどの過度なスキンシップは控えたり、大きくは環境・生態系を守っていくことが重要だと言えます。

(土屋 敏之 解説委員)


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土屋 敏之  解説委員

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