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「脱炭素社会へ 新制度検討へ」(ここに注目!)

神子田 章博  解説委員

経済産業省は、企業が二酸化炭素を排出した量に応じて金銭的な負担を負うカーボンプライシングという新たな制度を検討する研究会をきょうから開始します。

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Q 神子田さんこのカーボンプライシング、カーボンは炭素、プライシングは価格をつけるという意味ですが、どういう政策なんでしょうか?

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A 脱炭素社会に向けて、環境省も今月から有識者委員会をつくって具体的な制度設計に向けた議論を進めている重要な政策です。具体的には、炭素の排出量に応じて税金をかける炭素税の本格的な導入が選択肢の一つにあげられます。企業は、排出量が多ければそれだけ税金をとられるので、できるだけ排出を抑えようというインセンティブ=動機が強まることになるとみられます。そして排出量取引制度という案もでています。

Q 排出量取引制度とはどんな制度なんでしょうか?

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A こちらは、各企業ごとに、二酸化炭素の排出量の上限を政府が決めます。そしてある企業の排出量が決められた上限を上回ってしまった場合は、排出量が上限を下回り排出枠が余った企業から、その余った排出枠を購入する仕組みです。こちらも、その分金銭的な負担がかかるので、企業が排出削減の取り組みを強めることになる、という狙いがあるんです。このカーボンプライシング。世界46の国などでいずれかの形で導入されているのですが、国内には慎重な意見も出ています。

Q それはなぜですか?

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A 産業界からは、二酸化炭素削減に必要な技術を開発したり、新たな設備を導入したりするのに、莫大な投資が必要だ。それなのにカーボンプライシングで新たな経済的な負担を負わされることになれば、その分、技術開発や投資にお金を回せなくなり、脱炭素化の取り組みにブレーキがかかりかねないという懸念が出ています。その一方で、有識者からは、企業は新たな制度を通じて脱炭素化の取り組みを強化せざるを得なくなるので、技術革新も加速するという見方も出ています。政府のグリーン成長戦略では、カーボンプライシングについて、成長戦略に資するものついて検討するとしています。環境政策と経済成長を両立する制度を作るためにどのような検討が行われていくか注目されます。

(神子田 章博 解説委員)

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