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世界が注目 イスラエルのワクチン接種データ

出川 展恒  解説委員

日本でも、あす17日から、医療従事者を対象に、新型コロナウイルスのワクチン接種が始まります。こうした中、世界最速のペースでワクチン接種が進むイスラエルが集めたデータに、世界の目が注がれています。出川解説委員です。

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Q1:
イスラエルのワクチン接種、どのくらい進んでいるのですか。

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A1:
イスラエルでは、アメリカのファイザー社などが開発したワクチンを、ネタニヤフ首相の主導で確保しました。2か月前から、まず60歳以上の高齢者を中心に接種を進め、今月、16歳以上に対象を拡大しました。すでに、およそ930万人の国民の40%が少なくとも1回の接種を受け、2回接種を受けた人も25%を超え、世界最速のペースです。そして、ワクチンの効果や副反応に関するデータも出始めています。

Q2:
どんな結果が出ていますか。

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A2:
イスラエルの保健当局や専門家の話を総合しますと、60歳以上の新規の感染者数が、およそ60%減り、病院に入院した患者は、およそ45%減っている。ワクチンの有効性は、93%から94%と推定され、ファイザー社の臨床試験のデータとほぼ同じだということです。また、イスラエル政府は、先月27日までの時点で、痛みや腫れなどの比較的軽い副反応が現れたのは、およそ0.25%だったとしています。

Q3:
同じファイザー社製のワクチン接種が始まる日本にも、参考になるデータですね。

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A3:
はい。イスラエルでは、ほぼすべての国民の医療記録、これまでどんな病気にかかり、どんな治療を受け、アレルギーがあるかどうかなどが、デジタルデータとして蓄積されています。
これがワクチン接種に活用される一方、迅速なデータ分析も可能です。すべてのデータがファイザー社に提供されることになっており、いわば、国全体が「ワクチンの実験室」となっているのです。ただし、若年層も含めた新規の感染者数は減少傾向にあるものの、現在も、1日3000人前後と高い水準です。変異ウイルスの影響なども指摘され、長期にわたる追跡調査が必要です。
日本政府としても、今後、ファイザー社やイスラエル政府からデータを集め、接種計画に役立てる必要があると思います。

(出川 展恒 解説委員)


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