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議論本格化 給料の"デジタル払い"

竹田 忠  解説委員

サラリーマンにとって大変気になるニュースです。
政府が進めるデジタル化。
ついに給料もデジタルで受け取るという議論が本格化しています。
竹田忠解説委員です。

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Q 給料をデジタルで受け取る、と言うのは、具体的にはどういうことなんですか?

A
簡単にいうと、スマホで給料が受けとれるようになる、ということなんです。
どういうことかというと、
今は、会社が給料を銀行口座に振り込んで、
それを利用者がATMまで出向いて引き出す、というのが基本の流れです。
これを直接、会社がスマホにキャッシュレスで入金できるようにする。
具体的には、もうすでに○○ペイと呼ばれる
スマホの決済アプリなどがいくつも出回ってますので、
そういうものを使って会社が入金をする。
そうすれば利用者はすぐにお金を使えるし、わざわざ引き出す手間も省けると。

Q それって、今はできないんですか?

A
そもそも、今は、そういうことが許されてないんです。

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どういうことかというと、労働基準法は、労働者を保護するために
給料を直接、現金で払うよう定めています。
銀行振り込みは違っていますが、
役所が決める省令で、例外として認められているのでできる。
だったら、このデジタル払いも
省令で認めるよう、変更してはどうか、という話しなんです。

Q もしそうなると、給料はこれからデジタル払いになっていくんですか?


まず、これは従業員が同意することが前提です。
それに、想定されている使い方も、
どちらか一方だけ、というのではなくて、
たとえば銀行振り込みを利用しつつ、
すぐに使う分は、デジタルで受け取る、といった使い方が
想定されているわけです。

Q 政府はいつから始めようとしているんですか?

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実はコレは政府の成長戦略のキャッシュレス推進策の中に入ってまして、
今年3月、つまり来月までに制度の基本的な仕組みを作ることになってるんです。

ただ、問題は、安全性でして、
この議論をしている厚生労働省の審議会で、
連合などの労働側は、
アプリの安全性や、事業者が経営破綻した時の補償の仕組みなどを
もっと明確にするよう求めています。
政府も、これから一定の安全基準を作って
およそ80社ある決済アプリの事業者の中から、
デジタル払いの対象となる事業者を絞り込む方針です。

とにかく給料というのは、はたらく者にとって最も重要な生活の基盤ですから
ここはしっかり議論してほしいと思います。

(竹田 忠 解説委員)


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