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契約書の電子化 消費者保護への配慮も!

今井 純子  解説委員

消費者庁は、訪問販売などの取引で契約書を書面で渡すよう義務付けている法律を、メールで送れるよう改正する方針を打ち出しました。これに対して、消費者団体や各地の弁護士会から反対の意見が相次いでいます。今井解説委員。

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Q)契約書を書面でというのは、この特定商取引法という法律で義務付けられているのですね。それをなぜ、変えようというのでしょうか?
A)はい。今回の議論。直接のきっかけは、新型コロナウイルスの感染を防ぐためオンラインで受けられる英会話やヨガのレッスンをめぐってでした。オンラインで契約書を入力してもらうのに、それを印刷して消費者に郵送しなければならないのはいかがなものか、と政府の規制改革推進会議の中で指摘がありました。これを受けて消費者庁が、契約書をメールなどで送ることを認める方針を打ち出したのですが、そこに、訪問販売や電話勧誘なども含まれていたことから、反対の意見が相次いでいるのです。

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Q)訪問販売や電話勧誘もメールでというのですか?
A)そうなのです。オンラインの取引では、メールで契約書をもらった方がいいという人はいるかもしれません。ただ、訪問販売などは、突然の勧誘でよく考える間もなく、契約を求められるためトラブルが多い。だから、法律で厳しい規制がかけられている。それがメールになると、例えば、一定の期間、無条件で契約を解除できる「クーリング・オフ」を利用できなくなる人が増えるのではないか、そんな指摘も出ているのです。

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Q)それはなぜですか?
A)書面の契約書では、クーリング・オフができることを赤く、大きな字で書くことが義務付けられています。それを、スマホの小さな画面で、しかもスクロールしてみることになると、本人が気づかない。また、スマホの中なので家族の目にも触れにくくなり、気づかないまま、期限が過ぎてしまう。そんなケースが増えるのではないか、というのです。消費者庁は、あくまでも「消費者が承諾した場合に限る」としていますが、悪質な事業者が「メールの方が簡単ですよ」と誘導することも考えられます。

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この「承諾」をどう定義して、どう被害を防ぐのか。弱い立場の消費者に寄り添った丁寧で慎重な検討が求められると思います。

(今井 純子 解説委員)

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