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「感染症法改正案 "罰則"は慎重に」(ここに注目!)

米原 達生  解説委員

新型コロナウイルス対策に関連して、入院勧告や保健所の調査に協力しない人への罰則を盛り込んだ感染症法改正案の審議が始まります。担当は米原解説委員です。

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Q。保健所の調査を拒む感染者に罰則を示していますね。
A。はい。新型コロナ対策では保健所がこうした聞き取り調査をしますが、拒否されるケースもあります。そこで、実効性を確保するため、感染症法に、正当な理由なくうそをついたり、拒んだりしたら刑事罰として50万円以下の罰金、といった規定を盛り込もうとしています。

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Q。調査は必要でしょうが、行動を一つ一つ全部聞かれるのには抵抗がある人もいますよね。
A。その通りです。とはいっても皆さん、趣旨を理解すると、おおむね調査には協力的だということです。ではどんな人が協力しないのか保健所に聞きますと、最初から全く協力する気がない人もいますが、多くは仕事や生活、人間関係への影響を心配しているということで、勘弁してほしいと泣き出す人もいるそうなんです。保健所もその点は配慮しながら調査しているわけですが、そこに刑事罰がつくことに、医療や法律の専門家から反対の声が出ています。

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面倒なことになるならそもそも「検査を受けないでおこう」という人が出てくるからです。これは、これまでの感染症でも問題になったことなんです。

Q。そうなると本末転倒ですが、確かに罰則がどこまで現実に行われるのか心配ですね。
A。注目点の一つは罰則の対象にならない「正当な理由」の範囲だと思います。厚生労働省の幹部も「罰則の適用は慎重にあるべきで正当な理由の具体例は今後説明したい」と話していますが、罰則が乱用されないことが担保できないのであれば、規定を作るかどうかの結論を急ぐべきではないと思います。

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Q。感染を抑えたい立場か、感染者の立場かで受け止めが分かれそうですね。
A。感染症法はハンセン病やエイズの患者への差別を教訓に、「患者が置かれている状況を深く認識し人権を尊重しつつ施策を推進する」と基本理念に記しています。今は何としても感染拡大を抑え込みたいという状況の中での法案審議となるだけに、患者の立場を踏まえた、冷静な議論をしてほしいと思います。

(米原 達生 解説委員)

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