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東南アジア ワクチンは中国頼み

藤下 超  解説委員

東南アジアでは、新型コロナウイルスのワクチンの調達で、中国への依存が強まっています。

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Q。中国の王毅外相と一緒に飛んでいるのはワクチンですか?

A。はい。
この中国製のワクチン、いま、東南アジアのほとんどの国が、調達に向けて動いています。
このうち、最も感染者が多いインドネシアは、1億回分以上を調達する予定で、先週、国民への接種もはじめました。
安全性や効果への疑問も出たため、ジョコ大統領みずからが最初に接種を受け、懸念の払しょくに努めました。
このほか、タイが200万回分、カンボジアが100万回分の調達をすでに決めています。

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Q。「ワクチン外交」とありますが、中国は東南アジアへのワクチン提供に特に積極的なのですか。

A。そうです。
先週も王毅外相が東南アジア4か国を回り、ミャンマーに30万回分、フィリピンに50万回分を無償で提供すると約束しました。
ただ、ワクチン協力の一方、相手国に巨大経済圏構想「一帯一路」への協力を求めるなど、政治的な思惑もちらつきます。
中国にとって東南アジアは、南シナ海問題を抱える、アメリカとの覇権争いの最前線。
バイデン政権が本格始動する前に、ワクチンを武器に影響力を拡大しておきたい狙いもあると指摘されています。

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Q。中国以外からのワクチンの調達は難しいのでしょうか。

A。
欧米製のワクチンは供給が先進国に偏っていて、所得の低い途上国には回っていないのが実情です。
ワクチン格差とも言える状況が、中国のワクチン外交の背景にあるのです。
WHOなどがワクチンを公平に分配するための国際的な枠組みを設けていますが、この枠組みを通じた配布はまだ始まっていません。
ワクチンが、外交のための道具ではなく、コロナに打ち勝つための世界共通の武器として使われるよう、国際社会には、公平な分配に向けた努力が求められると思います。

(藤下 超 解説委員)


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藤下 超  解説委員

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