北朝鮮と韓国では、年明けから日本にとって心配な出来事が続いています。
波乱の年明けとなった朝鮮半島情勢について出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。
Q1、きょうは、厚い雲から激しい雨と風が吹き付けてきているイラストですね。
A1、朝鮮半島は日本の安全にとってきわめて重要な地域ですが、年明けから不穏なムードが立ち込めています。まず北朝鮮です。先週から始まった朝鮮労働党の党大会で総書記に選出されたキム・ジョンウン氏が演説しました。
今月発足するアメリカのバイデン新政権についての発言が注目されていましたが、演説では「どんな政権になってもアメリカの実体は変わらない」「最大の敵であるアメリカを制圧し、屈服させる」と対決姿勢を示しました。さらに「核兵器の小型・軽量化や超大型の核弾頭の生産を進める」と強調しています。
Q2、対話ムードとはほど遠い姿勢ですね。
A2、北朝鮮は去年、軍事パレードでICBM級と見られる超大型の弾道ミサイルを登場させています。バイデン政権の北朝鮮政策を見極めたうえで、今後、新たな挑発に出てくる可能性は十分あると思います。
Q3、そして朝鮮半島のもうひとつの国、韓国でも心配な動きがありましたね。
A3、元慰安婦が日本政府を訴えていた裁判で先週、ソウルの地方裁判所が、日本政府に賠償を命じる判決を言い渡しました。韓国政府も「司法の判断を尊重する」としています。
慰安婦問題については、1965年の日韓請求権協定と2015年の日韓合意で「完全かつ最終的に解決済み」というのが日本政府の立場です。そもそも主権国家は他国の裁判には服さないというのが国際法の原則で、菅総理大臣は「断じて受け入れることはできない」と猛反発しています。徴用をめぐる裁判は民間企業が対象でしたが、今回は国際法の原則を適用せず日本政府に賠償を命じたという点で影響はより甚大です。
対決姿勢を打ち出し核・ミサイル開発を強化するとしている北朝鮮。
冷え切った日韓関係にさらに氷水を浴びせた形の韓国。
ことしは日本の外交の力が問われる一年になりそうです。
(出石 直 解説委員)
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