緊急事態宣言が出される中で、注目されている数字の一つが「入院や療養を調整中」の人たちの数です。担当は社会保障担当の米原達生解説委員です。
▼保健所の敷地に行列ができていますが、この人たちが調整中の人たちですか。
▽はい。感染者の増加に、対応が追い付かないんです。
検査で陽性者が出ると保健所は本人と電話で感染経路や濃厚接触者を特定するやりとりし、接触者には検査を調整します。そのうえで本人に対して、入院か、ホテルでの宿泊療養か、自宅療養か決めて調整します。この作業が追い付きません。
東京都ではその日のうちに行き先を調整できなかった人の数は12月末の時点で一週間に3000人まで膨れ上がり、実に半分の人の調整が、翌日に持ち越される事態になりました。それが積みあがって、行き先が決まらない、「調整中」の人は1月11日の時点で7031人に上っているんです。
▼保健所もこれまで体制を拡大してきましたよね。
▽感染者の増加のペースが早すぎるのです。そして今は医療機関のベッドも空かない“ダブルパンチ”となっています。こうした調整中の人は基本的に自宅にいるんですが、中に注意が必要な人たちが出ています。
▼どんな人たちですか?
▽新型コロナ自体による症状は軽くても、お年寄りだったり、持病があったりして重症化しやすい人たちです。コロナだけでなく介護や人工透析が必要だと、対応が複合的なので、入院調整がかなり難しくなっています。感染者全員が病院の管理下あったのは、もはやずいぶん前の話で、東京でも大阪でも今や感染者の半数以上が自宅にいる状態です。容体が急変して搬送されることも珍しくありません。最近は療養中に亡くなるケースも相次いでいます。
▼どうすればいいのでしょう?
▽他人事と思わずに感染予防をして、感染の波をみんなで引き下げるしか根本的な解決はありません。ただ、緊急事態宣言の効果は、まだしばらくは出てこないでしょうから、保健所のさらなる体制強化を急ぐのと、今は感染者を受け入れていない医療機関を含めて、病床確保への一層の協力を求める必要があると思います。
(米原 達生 解説委員)
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