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核燃料施設共同利用を検討 そのワケは

水野 倫之  解説委員

原発の使用済み核燃料を保管するため青森県むつ市に建設中の施設について、水野解説委員の解説。

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イラスト、地元は不機嫌な顔してるが、重要な話が何の相談もなく発表され、「青森は核のゴミ捨て場ではない」と不快感をあらわに。
この施設は東電など2社が自分たちの使用済み核燃料の一時的な保管施設として青森県とむつ市の了解を得て建設。

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それを今回業界団体の電事連が、ほかの電力会社の使用済み核燃料も保管できるよう共同利用を検討しようという。
なぜ共同利用の検討が必要なのか。
再処理工場の遅れもあり全国の原発の使用済み核燃料プールはすでに8割近くが埋まり、原発が運転できなくなるおそれもあって、使用済み燃料対策は各社共通の課題。
そこでほかの原発分も保管できるようにしようというのが表向きの理由。
ただ大手電力の中には敷地内に新たな施設を作るなど独自の対策を進めているところもある。

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そうした中、反発も承知で共同利用案を示したのには、関西電力の支援という事情があるとみられる。
関電は年明けにも、運転開始から40年以上の福井県にある老朽原発の再稼働を目指している。
ただ福井県は条件として、たまった使用済み核燃料の県外での保管に年内にメドをつけるよう求めていた。
ところが経営幹部の金品受領問題で信頼が失墜したこともあって難航。
そこで時間切れ前に急遽、業界として共同利用を提案して支援しようという思惑。
ただむつ市など地元は納得していない。
原子力施設にとって一番大切なのは地元の理解を得ること。
それを軽視するようなやり方では、原子力の信頼回復は遠のくばかり。
電事連だけでなく関電も前に出て、共同利用の事情や使用済み燃料を最終的にどこで処理するのか、地元に丁寧に説明することから始めなければ。

(水野 倫之 解説委員)


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