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『工匠の技』無形文化遺産に

高橋 俊雄  解説委員

日本の木造建造物を受け継いでいくための技術、「伝統建築工匠(こうしょう)の技」が、14日から始まるユネスコの政府間委員会で、無形文化遺産に登録される見通しです。

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姫路城や法隆寺の五重塔、合掌造りの民家は、「世界文化遺産」に登録されています。一方、今回の「伝統建築工匠の技」は、「無形文化遺産」という別の枠組みです。いずれもユネスコの事業で、名前もよく似ていますが、無形文化遺産は伝統芸能や工芸技術などが対象です。
「伝統建築工匠の技」は、古くから伝わる木造の建物を必要に応じて修理し、後世に伝えていくために欠かすことのできない伝統技術です。日本の無形文化遺産はこれまで「能楽」や「歌舞伎」、「和食」などがあり、今回、「工匠の技」が登録されれば22件目となります。

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「工匠の技」は無形遺産の側にいながら、世界遺産などの建物を維持していく役目を果たしています。この中には例えば、伝統的な大工の技術「建造物木工」がありますし、お城の修復などに必要な「屋根瓦葺(ぶき)」や壁を仕上げる「左官」の技術もあります。合掌造りの建物を残していくためには、屋根の材料となるススキやヨシを育てて調達する「茅(かや)採取」が不可欠です。登録される技術は、合わせて17件にのぼります。

「工匠の技」は、事前審査を行ったユネスコの評価機関が登録するよう勧告。その理由の1つとして、「持続可能な開発に沿った提案」であることをあげています。木や草などの自然素材で作られた建物を伝統的な技術で受け継いでいくことは、今の時代にこそ必要だといえます。
一方でこの技術を今後も永く残していくためには、担い手の育成や、材料の安定した確保が欠かせません。

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今回の無形文化遺産への登録によって、歴史的な建造物そのものだけでなく、それを支える「縁の下の技」への関心が高まることを期待したいと思います。

(高橋 俊雄 解説委員)


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