東京オリンピックで新たに実施される空手。その全日本選手権が12月13日に行われます。空手本来の姿と、新型コロナの感染防止対策を両立させる取り組みについて、小澤正修解説委員です。
Q1
イラストは「とう!」、「とう!」と声を出していますね。
A1
空手に欠かせない要素のひとつが、技を繰り出す際などの声、「気合い」です。その際に出る飛まつをどう防ぐかが課題になっていたのです。空手のうち、「形」は原則1人で演武しますが、1対1で対戦する「組手」は、相手と距離を取るのが難しいという競技特性があります。
全日本空手道連盟はいったんガイドラインで、気合いを控えるよう求めましたが、選手などから「力が入りにくい。やりにくい」という声が相次ぎました。このため、空手本来の姿をできるだけ保ちながら、感染を防止する方法を検討してきたのです。
Q2
どんな取り組みをするのか?
A2
注目したのは、主に高校生以下の選手が頭を守るために使うメンホーという防具、これを全日本選手権で使えないかということでした。ラグビーのヘッドギアにフェイスシールドを取り付けたような姿をイメージしてもらえたら、と思います。イラストはわかりやすくするために簡略化して色もつけてみました。本来、いくつか通気用の穴が開いているのですが、イラストの赤い部分、口元にシールドを加えれば、飛まつの拡散を抑える可能性が高いのではないかと考えたのです。例えば最も飛まつが出る例のひとつ、「とう!」という気合いの時。連盟が大手設備工事会社と行った測定では、この防具をつけた場合、5マイクロメートル以上の飛まつの数が、何もつけない時と比べて98%減少する結果が出ました。
Q3
東京オリンピックにも参考になる?
A3
こうした防具は、組手のルールが、当たる直前で技を止める、いわゆる「寸止め」であることなどから国際大会では使われていませんが、東京オリンピック開催に向けては「安全安心をどう確保するか」が最優先の課題ですので、参考になると思います。今回の空手のように、競技性の維持とそれぞれの特性に即した感染防止対策をどう両立させるのか、各競技で工夫が求められると思います。
(小澤 正修 解説委員)
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