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海外で進むワクチン接種 日本は?

中村 幸司  解説委員

新型コロナウイルスのワクチンについてです。イギリスで接種が始まるなど、海外でワクチン接種の動きが進んでいます。

Q:国内ではいつごろ接種できるようになるのでしょうか?
A:現時点では、はっきりとした時期はわかりません。ただ、どういった状況なのか見てみます。

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上の図は、海外で開発されたワクチンの接種までの流れです。日本では、いまアメリカの製薬大手「ファイザー」などのワクチンが数百人規模の臨床試験を行っています。まだ、申請の前の段階です。

Q:この後は、大規模な臨床試験を行うのですか?
A:海外のワクチンも、日本人で安全性や有効性の確認が必要です。イギリスのように数万人を対象にした大規模の臨床試験を行えば、数か月程度はかかります。

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ただ、日本の審査機関は、2020年9月に「大規模臨床試験を行わない場合もある」、つまり、図の赤い橋も渡れるという考え方を示しています。

Q:そうなれば、スケジュールが早まりそうですが、大規模な臨床試験せずに、安全性の確認などは大丈夫なのでしょうか?
A:海外の大規模臨床試験や国内での臨床試験などを総合して、安全性、有効性が確認できること、というのが赤い橋を渡る条件です。審査ではこうした点を慎重に判断ことが重要です。

Q:図の「承認」まで行っても橋が工事中です。接種の段階に、すぐには行かれないのでしょうか?
A:準備が必要です。

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ひとつが「流通体制」です。ファイザーのワクチンでいいますと、-70度前後の非常に低い温度で管理する必要があります。日本政府は、3000台の冷凍庫を全国の医療機関に配置して、さらにそこからドライアイスを使って低温に保つ特殊な箱で病院などに運ぶ方針です。こうした体制づくりが一つ。
そして、1000人分といったように、まとまった数のワクチンが一度に運ばれてくることが想定されています。公共の施設に住民を集めて集団接種を行うなど、効率的な「接種体制」も求められます。

Q:承認後、前に進めるように準備を進める必要がありますね。
A:今後は、一人一人が冷静に混乱なく接種できるようにする必要があります。
そのために、国は安全性をどう評価したのか、有効性はどれくらい期待できるのかといった情報を、国民にわかりやすく説明することが大切になっています。

(中村 幸司 解説委員)


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中村 幸司  解説委員

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