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いつ祝電を送るのか、プーチン大統領の思惑

石川 一洋  解説委員

ロシアのプーチン大統領は、アメリカの大統領選挙で勝利を宣言したバイデン前副大統領にいまだに祝電も送っていません。石川解説委員です。

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Q なぜ祝電を送らないのですか?

A 「トランプ大統領も敗北を認めていないし、最終的な結果も確定していない」というのが公式見解です。ただ先週中国の習近平主席もバイデン氏に祝電を送っています。2012年のオバマ大統領、2016年のトランプ大統領の時にはアメリカメディアが当確を伝えますと祝電を送っていたので、過去の事例と比べても遅さが際立っています。

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Q 公式見解はともかくとして本音は?

A 戦略家のプーチン大統領は、今一度諜報機関のまとめた“バイデンファイル”をじっくりと見なおしているでしょう。
「2011年、一度大統領職を離れていた時に、バイデンは、大統領だったメドベージェフにプーチンを大統領復帰させないようけしかけていたな」とか、「米ロ関係が危機的状況になった2014年のウクライナ危機の背後にいたのがバイデンだったな」とか、プーチン大統領には素直に祝福できない思いが様々あるのではないでしょうか。

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Q プーチン大統領はどんな戦略を練っているのですか?

A 個人的には関係が良かったトランプ大統領に一定の敬意を示すことで楔を打ち込み、アメリカの分断を広げたいのかもしれません。
一方バイデン外交への警戒感もあります。民主主義を重視するバイデン氏はプーチン大統領のような独裁的な指導者には厳しくあたるとしています。米ロがともに大統領選挙を迎える2024年に、バイデン氏がロシアの内政に手を突っ込み、体制転覆を試みるのではないか、とプーチン大統領は警戒しているのです。
先手をうって「お互いに選挙の公式結果を尊重すべき」という立場を、示そうとしているようにも見えます。

Q いつ、どんな内容の祝電を送るのでしょう

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A 12月14日、アメリカ大統領選挙の選挙人投票の結果が出たあとではないでしょうか。
内容は極めて丁重、米ロは世界の安全に責任を負っているとして、建設的かつ対等、公正な関係を望むとするでしょう。2月に期限切れを迎える新START条約の延長を呼び掛けるかもしれません。
最低レベルとされる米ロ関係、バイデン次期政権になっても改善は望めず、丁重な祝電は厳しいプーチンバイデン関係の始まりとなるでしょう。

(石川 一洋 解説委員)


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