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動き始めたアメリカ政権移行

髙橋 祐介  解説委員

アメリカ大統領選挙は、投票日から3週間目に入った今週、難航していた政権移行がようやく動き始めました。髙橋解説委員とお伝えします。

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Q1)
けさのイラストはホワイトハウスの周囲で大工事?
A1)
“バイデン政権”の骨組みづくりです。アメリカの政権交代は、日本に喩えると、霞が関の中央省庁の幹部がそっくり入れ替わるような膨大な作業です。このため、バイデン氏はまず主要な閣僚人事に着手しています。連邦政府から引継ぎ作業の開始が承認されたことで、予算支出や各省庁との接触も可能になりました。バイデン氏とハリス氏は、来週からトランプ大統領と同様に情報機関による最高度の機密情報も報告される見通しです。来年1月20日の就任式に向けて、工事は急ピッチで進められるでしょう。

Q2)
でも、この段階になってもトランプ大統領が敗北を認めないのはなぜでしょうか?
A2)
確かに各州の法廷闘争でも結果を覆すには至らず、もはや誰の目にも敗色濃厚は明らかですが、それでもトランプ大統領は「勝利は断じて諦めない」としています。無論、大統領の真意はよくわかりません。ただ、きのう(26日)アメリカは感謝祭の休日。この日を前にトランプ大統領がホワイトハウスの恒例行事で食卓にのせなかった七面鳥だけでなく、いわゆるロシア疑惑をめぐって罪に問われた元側近にも“恩赦”を与えたことに、ひとつのヒントが隠されているのかも知れません。

Q3)
どうして“恩赦”がヒントになるのでしょうか?
A3)
トランプ大統領は、ロシア疑惑や就任前の納税など様々な疑惑をめぐり、在任中は刑事訴追を免れる特権を持っています。しかし退任したらいわば“ただのヒト”。そうなる前に大統領が仮に自分で自分に“恩赦”を与えたら、法律上も道義的にも大きな論議を呼ぶのは確実です。しかも、バイデン氏は選挙期間中、自分が大統領になったらトランプ氏に「恩赦は与えない」と発言しています。「選挙に不正があった」と主張して、あくまでも敗北を認めないトランプ大統領。どうすれば退任後みずからに訴追の手が及ばないかを模索しているのかも知れません。

(髙橋 祐介 解説委員)


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