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サイ・ヤング賞 日本投手初受賞なるか

小澤 正修  解説委員

イラスト解説「ここに注目」です。大リーグのピッチャーにとって最高の栄誉とされる「サイ・ヤング賞」の受賞者が11月12日に発表されます。小澤正修解説委員です。

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Q1
すごい賞なのですか?
A1
大リーグ初期に活躍した通算511勝のサイ・ヤング投手から名前がとられた賞で、毎年両リーグで1人ずつ選ばれる大変栄誉ある賞です。ことしはナショナルリーグでダルビッシュ有投手、アメリカンリーグで前田健太投手がそれぞれ3人の最終候補に残りました。日本投手では野茂英雄投手など数多くの名投手でも受賞はなく、初の快挙がなるか注目されています。

Q2
受賞の可能性はどうでしょうか?

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A2
前田投手のアメリカンリーグはインディアンズのビーバー投手がタイトルを独占し、受賞最有力と言われています。一方、ダルビッシュ投手のナショナルリーグは最終候補3人が主要なタイトルをわけあい、激戦が予想されています。受賞者は全米野球記者協会の記者の投票で決まりますが、ことしは新型コロナの影響でシーズンが60試合に短縮され、勝利数や防御率、奪三振といった部門で大きな差がつきませんでした。また取材にも制限があったため、記者がすべてのピッチャーを直接みることができず、選考の難しさに拍車をかけているのです。

Q3
では、なにが判断材料になる?

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A3
勝利数や防御率といった伝統的な数値に加えて、「セイバーメトリクス」という統計学の視点から導き出された指標が大きな判断材料となると思います。指標は数多くあるのですが例えば、コントロールのよさを示す指標には、奪った三振と与えたフォアボールの比率というものがあって、これで見るとダルビッシュ投手は最終候補3人の中で群を抜く数値でした。味方の打線や守備などの要素をできるだけ排除して、「ピッチャー本人の力」を見極めるために、タイトルと直接結びつかないこうした指標が最近は参考にされる傾向が強いのです。特に新型コロナの影響を受けた今年は、例年以上に、選考に影響を与えるのではないかと思います。「投票する記者は気の毒」とまで言われる中、最終候補のどの力が重視されるのか、注目です。

(小澤 正修 解説委員)


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