性的暴行など、性犯罪で服役している受刑者や保護観察を受けている人は、再犯を防ぐための「処遇プログラム」を受けています。
14年前に始まった制度ですが、先週公表された報告書の中で課題が明らかになりました。
その課題とは何か、山形晶解説委員に聞きます。
Q:そもそも処遇プログラムというのはどのようなものですか?
A:本人の内面や行動を変えていく心理的な療法です。
受刑者などをグループで話し合わせ、性犯罪の背景にある「認知のゆがみ」を理解させるのが大きな目的です。
Q:「認知のゆがみ」とは何ですか?
A:「物事の捉え方がゆがんでいる」ということです。
典型的なのは、強引に性行為をしようとして相手に抵抗された時に「本当は嫌がっていない」と身勝手に受け止めることです。
グループの話し合いでは、例えば、対人関係でトラブルが起きた場面などを想定して、「自分ならどう受け止めるか」を議論します。
人によって物事の捉え方が違うことに気づけば、相手が嫌がっていたことが理解できるようになり、再犯の防止につながります。
Q:効果は上がっているのでしょうか?
A:まさにそこがポイントです。
法務省は、有識者の検討会を設けてプログラムの見直しを議論してきました。
先週まとまった報告書では、「一定の抑止効果が確認されている」として、今のプログラムの基本的な部分は変えず、内容の一部や研修体制などを見直すことが提言されました。
Q:大きな見直しは必要ないということですか?
A:はい。ただ、私が注目したのは、課題の部分です。
実は、プログラムの効果が見られないタイプもいることがわかったんです。
法務省が、プログラムを受けた者と受けなかった者の再犯率を比較したところ、電車での痴漢のように行為が常習化している者や、子どもを狙うような者は、再犯率が変わらず、明確な効果が見られなかったのです。
Q:そこは改善するのでしょうか?
A:はい。法務省は来年度に検討を進めることにしています。
性犯罪は「魂の殺人」とも言われています。
犯罪の性質に応じた効果的なプログラムを実現してもらいたいと思います。
(山形 晶 解説委員)
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