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アメリカ経済に財政の崖

神子田 章博  解説委員

アメリカでは、コロナ禍で落ち込む景気を支える経済対策の行方が不透明となっています。

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Q1 神子田さん、アメリカの人たちが乗ったバスの行く手が崖になっていますね

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A1 景気を支えていた財政支出が大幅に削減され、経済の悪化が懸念されることを財政の崖というんですが、いまアメリカはこの崖の瀬戸際にいるんです。アメリカでは今年3月日本円で230兆円に上る大規模な経済対策をまとめ、通常の失業手当に週6万円程度を上乗せするなどの対策を実施してきました。

Q2 週6万円ということは、ひと月だと24万円も余計にうけとれるということですか?ずいぶん手厚いですね

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A2 そうなんです。そのおかげで消費が維持され経済回復を支えてきたんですが、その対策は7月に期限が切れ、その後は、政府の別の予算枠を使って行ってきましたが、それも限界があります。アメリカの中央銀行FRBはこのまま政府の追加の経済対策がなければ、景気に深刻な影響を及ぼすと懸念を示しています。崖を回避するには議会が大規模な追加の財政支出を承認する必要がありますが、与党共和党は高額な失業手当が続けば、人々は仕事に就こうとしないと主張。一方、野党民主党は、低所得者を支えるには手厚い支援が欠かせないとして、お互いの政治哲学を背景とした対立が続いてきました。そうした中で先週トランプ大統領は、経済対策は来月の大統領選挙の後まで先伸ばしすると述べ、株価が一時大幅に下落する一幕がありました。

Q3 大統領選挙を前に株価が下がるのは、トランプさんにとってもマイナスだと思うんですが、なぜ経済対策が後回しになったんですか?

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A3 保守層の支持固めをはかるために、保守派の最高裁判事を議会で承認してもらうことを優先したいから、ということでした。が、そのトランプ氏、自らの発言で株価が落ちると見るや、航空会社や中小企業の支援策を選挙の前に行うと前言撤回。ただ、その対策には民主党の主張が反映されておらず、追加対策の行方には霧がかかった状況です。有権者にとっては、自分の懐が温まるかどうかの分かれ目ということで、この問題、大統領選挙の行方にも影響を与えそうです。

(神子田 章博 解説委員)


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神子田 章博  解説委員

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