茂木外務大臣が、就任後初めての中東訪問として、3日にサウジアラビア、4日にクウェートを訪れました。その意義について、出川解説委員です。
Q1:
茂木外務大臣、なぜこの時期に中東を訪問したのでしょうか。
A1:
日本が原油の大部分を輸入しているペルシャ湾岸地域で、イランとアメリカ、イランとサウジアラビアが対立を深める一方で、アラブ首長国連邦とバーレーンが、イスラエルと国交を正常化するなど、状況が目まぐるしく動いているからです。
Q2:
サウジアラビアを最初の訪問先に選んだのは、なぜですか。
A2:
来月、G20サミット(主要20か国首脳会議)が首都リヤドで開かれることが大きいと思います。サウジアラビアは、アラブ、イスラム世界で大きな影響力を持ち、日本にとっては、原油の最大の供給国です。茂木外務大臣は、ファイサル外相などとの会談で、G20サミットを成功に導くため、去年、議長国を務めた経験を活かし、協力することで一致しました。そして、サウジアラビアが進めている大胆な経済改革、石油への依存から脱却し、産業の多角化を図る改革を、日本が官民挙げて支援する方針を伝えました。
これに対し、サウジアラビア側は、今後も日本に原油を安定供給すると約束しました。
Q3:
クウェートへの訪問はどんな狙いですか。
A3:
長年クウェートを率いてきたサバハ前首長が、先週亡くなったため、弔問のため、急遽訪問したものです。
サバハ前首長は、対立するペルシャ湾岸の国々の間で、調停外交を続けてきました。親日家でもあり、東日本大震災では、およそ400億円、世界で最も多くの義援金を提供し、三陸鉄道の復興などを支えました。
茂木外務大臣は、即位したばかりのナワフ首長と会談し、これまでの支援や、地域の安定に向けた努力に、感謝の意を伝えました。これに対し、ナワフ首長は、前首長の穏健な外交路線を引き継ぎ、日本との協力を一層発展させたいと述べました。
今回の中東訪問、突き詰めれば、エネルギーの安定確保が狙いと言えますが、湾岸アラブ諸国では、今、指導者の世代交代が進んでいます。可能な限り、指導者と直接会って、信頼関係を築くことが大切だと思います。
(出川 展恒 解説委員)
この委員の記事一覧はこちら