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深刻!北朝鮮の台風被害

出石 直  解説委員

立て続けに台風の直撃を受けた北朝鮮では、交通網が遮断されたり農地が水に浸かったりするなど深刻な被害が出ています。出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。

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Q1、巨体のキム委員長も吹き飛ばされそうですが、北朝鮮の台風被害かなり深刻なようですね。

A1、はい、北朝鮮は先月から今月にかけて台風8号、9号、そして10号と立て続けに台風の直撃を受けました。国営メディアも各地の被害状況を大きく伝えています。とりわけ収穫を前にした農作物の被害が深刻のようです。もともと食糧事情の悪い北朝鮮ですから国民生活への影響が心配されています。

Q2、キム委員長は、この難局にどう対応しているのでしょうか?

A2、首都ピョンヤンから軍の部隊を被災地に派遣したほか、自らも現地を訪れて復旧作業の陣頭指揮にあたっています。キム委員長がここまで復旧を急いでいるのには理由があるのです。

Q3、その理由というのは?

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A3、朝鮮労働党が創建されて75周年という大事な記念日が来月10日に迫っているからです。
さらに来年の1月には党大会という向こう5年間の経済計画を決める北朝鮮にとってもっとも重要な会議が予定されています。実はことし2020年は4年前に策定された「経済発展5か年戦略」の最終年度に当たります。農業や軽工業の生産を増やして経済発展を実現し、来月の党の記念日や来年の党大会につなげる思惑だったのです。

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ところが国連による経済制裁や新型コロナによる物資不足に加えて、今回の台風被害が追い打ちをかけました。キム委員長は先週開催された党の会議で「計画を全面的に見直さざるを得ない」と異例の発言をしています。復旧の遅れはキム委員長の指導力の低下をも招きかねません。何としても来月10日の党の記念日までに復旧作業を終えるよう現場に発破をかけているのです。今回の台風被害が、北朝鮮の経済や国民生活、そしてキム委員長の指導力にどんな影響を与えるのか注目したいと思います。

(出石 直 解説委員)


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