世界3大映画祭の1つ、イタリアの「ベネチア国際映画祭」が、現地時間の9月2日に開幕しました。
最優秀作品賞「金獅子賞」を競う部門に、日本の作品もノミネートされています。
(名越章浩解説委員)
【ノミネートされた作品は?】
ノミネートされているのは、黒沢清監督の作品「スパイの妻」です。
太平洋戦争直前の1940年に国家機密を偶然知ってしまい、反逆者と疑われた男性の妻が主人公です。夫とともに時代の荒波にのまれていく女性を蒼井優さんが、正義のために機密を発表しようと画策する男性を高橋一生さんが演じています。
【2つの「初めて」に注目】
この映画、黒沢監督の2つの「初めて」に注目です。
まず、黒沢監督作品がベネチアの金獅子賞を狙う部門にノミネートされるのが「初めて」。
ベネチア国際映画祭の金獅子賞は、69年前の1951年に、あの黒澤明監督が「羅生門」で受賞したことで知られています。
一方、黒沢清監督は、このイタリアではなく、これまでフランスのカンヌ映画祭の常連。海外の映画関係者からは、黒澤明監督にちなんで、日本には「もう1人のクロサワがいる」と高く評価されるほどファンの多い監督なのですが、映画界で最も歴史の古いベネチアの金獅子賞を狙える部門への挑戦は、意外にも今回が初めてなのです。
もう1つの「初めて」は、作品の舞台が「戦争の時代」ということ。
これまで黒沢監督作品は、代表作の「トウキョウソナタ」や「岸辺の旅」など、いずれも舞台は現代。今回、初めて戦争の時代を舞台にし、表現の幅をさらに広げた意欲作となっています。
【受賞すれば邦画では23年ぶり】
金獅子賞の発表は、現地時間の9月12日に予定されています。
もし受賞すれば、日本の作品としては1997年の北野武監督の作品「HANA-BI」以来、23年ぶりです。
いま、映画業界は新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受け続けていて、黒沢監督の“初めて”の作品で、明るいニュースがもたらされるのか、注目です。
(名越 章浩 解説委員)
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