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高校野球 『異例の練習会』実施へ

小澤 正修  解説委員

プロ野球などを目指す高校3年生が、スカウトにプレーを披露する練習会が8月29日から行われます。プロとアマが初めて合同で開催する異例の練習会の背景について、小澤正修解説委員です。

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Q1
練習会、なぜ行われることになったのですか?

A1
ことしは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、高校野球では春夏の甲子園が中止となったのをはじめ、練習試合すらほとんど行えない状態となり、高校3年生にとっては、アピールの場が激減していました。なので、今回は日本高校野球連盟と日本野球機構という、プロアマの両組織が異例とも言えるタッグを組んだのです。プロ志望届などを提出した球児およそ120人が、8月は甲子園球場、9月は東京ドームと、2つの会場にわかれて試合形式を中心としたプレーを披露することになっています。

Q2
プロとアマがタッグを組むのは、珍しいのですか?

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A2
日本の野球界では過去に強引な選手の引き抜きや不透明な金銭のやりとりがあったことなどから、プロとアマの間には壁があります。今は雪解けも進んでいますが、今回のような合同の取り組みは、あまり行われてきませんでした。交流も、サッカーは高校のサッカー部員がプロの練習に参加しても原則、問題ありませんが、高校野球では、プロ関係者と現役の部員は、基本的に接触もできません。つまり、高校生にとってはスカウトに試合などへ足を運んでもらうしかなく、ことしは進路への影響が心配されていたのです。練習会はプロのスカウトだけでなく、大学や社会人の野球部関係者も視察する予定ですので、参加する球児にとってはチャンスになると思います。

Q3
この中からドラフト上位で指名される選手も出てきそうなのでしょうか?

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A3
プロ注目の高校生の中には練習会に参加しない選手もいますし、各球団とも、すでに作成してある一定規模のリストから選手を絞り込んでいる段階です。なので、この練習会から、ドラフト会議で上位指名される選手が出てくるかどうかはわかりません。ただ、成長期の高校生は、最後の夏にかけて急速に力をつけ、一気に評価を高める選手もいます。今回の練習会はスカウトがその成長ぶりを確認できる場となって、埋もれていた原石が見つかる可能性もあると思います。球児にチャンスを与えたいと行われる、異例の練習会ですが、このようにプロアマ全体で野球界を盛り上げていこうという取り組み、今後も増やしていってほしいと思います。

(小澤 正修 解説委員)


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