新型コロナウイルス対策に世界が追われる中、数々の感染症に苦しむアフリカでポリオの根絶が発表され、全世界のポリオ撲滅に向けて大きく前進しました。
Q.アフリカのポリオ根絶はどうやって実現したのですか?
ポリオは急性灰白髄炎、一般に小児麻痺とも呼ばれ、かつては日本を含む世界中で猛威を振るいましたが、アフリカではナイジェリアで4年前に患者が確認されたあと新たな患者が出ず、WHOは日本時間のきょう未明、アフリカのポリオ根絶を宣言しました。新型コロナウイルスをはじめ感染症で多くの人が命を落としているアフリカで、ポリオ根絶は明るいニュースです。ただ、そこに至るまでの道のりは険しいものでした。というのは、ナイジェリアでは北東部でイスラム過激派組織ボコ・ハラムが少女を大量に拉致したりテロ活動を繰り返したりしているため、現地に行って子どもたちにワクチンを投与するのが難しかったのです。
そのナイジェリアのポリオ根絶に一役買ったのがビル・ゲイツ氏です。
Q2. マイクロソフト創業者のゲイツ氏ですか?
ビル・ゲイツ氏がメリンダ夫人とともに創設したゲイツ財団は、長年世界の感染症撲滅のために莫大な資金を投じてきました。ナイジェリアではポリオ根絶のために6年前から日本のJICA・国際協力機構と組んで予防接種の普及に取り組んできました。ワクチン接種率の目標を達成すれば、ゲイツ財団が現地政府の日本への債務を肩代わりするという仕組みを作るなどしてポリオ根絶に貢献しました。
Q.これで世界のポリオ撲滅が見えてきたのでしょうか?
残るはパキスタンとアフガニスタンの2か国だけですが、その山はアフリカより高く険しいのです。過激派の活動が活発で治安が悪いうえ、パキスタンではアメリカやWHOへの不信感が根強く、予防接種を拒む人が多いためです。40年前撲滅が宣言された天然痘に続いてポリオも世界から撲滅できるか、これからが正念場です。それには国際社会の一体となった取り組みが必要であり、その経験は新型コロナウイルスとの戦いにも役立つのではないでしょうか。
(二村 伸 解説委員)
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