日本と韓国の間で安全保障上の機密情報を共有する協定=GSOMIAを更新するかどうかを相手国に通告する期限が迫っています。協定は継続されるのか、それとも破棄されるのか。出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。
Q1、この協定、去年も破棄されるのではないかと騒ぎになりましたよね。
A1、その通りです。去年のちょうど今頃、韓国政府は協定を「破棄」すると日本に通告してきました。東アジアの安全保障にとって重要な協定なだけに関係者に衝撃が走りました。
ところが韓国政府は協定の期限が切れる直前になって、今度は「通告の効力を停止する」と日本側に伝えてきたのです。「破棄する」という決定はいったん取り下げられ、協定は「継続」されることになりました。
Q2、今はどういう状況なのでしょうか?
A2、協定を「継続」するのか「破棄」するのか、韓国政府内でも意見が分かれているようです。この協定は、弾道ミサイルの追跡など北朝鮮の脅威に備えたものです。
この地域の安全保障や日米韓の防衛協力の重要性を考えれば「破棄」という選択はありえないと思うのですが、韓国外務省の報道官はきのう(20日)「破棄するという通告を停止しているだけで、協定はいつでも終了できる」と発言しています。破棄するのであれば更新期限の90日前まで、つまり週明けの月曜日のうちには日本側に通告してくるはずです。
Q3、韓国政府はGSOMIAの継続に消極的なようにも思えるのですが?
A3、ムン政権が重視している北朝鮮との関係を悪化させたくないという思いが強いのだと思います。加えて日本に対する根強い不信感もあるようです。去年の夏にGSOMIAの破棄を決めた際、韓国政府の高官は「信頼関係が損なわれたから」と説明していました。それから一年が経ちましたが、今も徴用をめぐる問題や輸出管理をめぐる対立は続いています。両国間に信頼関係が築かれたとは到底言えません。最終的にはムン大統領の判断次第ですが、例え今回は「継続」となったとしても、信頼できない国どうしで、果たして安全保障についての機密情報の共有ができるのか疑問が残るところです。
(出石 直 解説委員)
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