NHK 解説委員室

これまでの解説記事

ベラルーシ長期政権 『独裁』大統領の試練

安間 英夫  解説委員

ロシアとヨーロッパの間にあるベラルーシで8月9日、大統領選挙が行われます。
長期政権で、欧米から“独裁者”と非難されてきた大統領が再選を果たす勢いですが、今回は試練に立たされています。

C200807_0.jpg

Q)“独裁者”と言われる大統領はいったいどんな指導者なのでしょうか?

A)ルカシェンコ大統領といって現在65歳。アイスホッケーが趣味です。
ベラルーシは旧ソビエトの中でもロシアの1番の同盟国で、ルカシェンコ大統領はこの国を5期26年にわたって率いてきました。
大衆迎合主義的な政策で国民の人気取りに走る一方で、政敵を排除しながら強権的な手法で選挙や政権運営を進め、欧米から“ヨーロッパ最後の独裁者”と非難されてきました。
6期目を目指す今回の選挙でも有力な対立候補を、資格を満たしていないとして相次いで排除していますが、思うようにゴールを決めることができないようです。

Q)どうしてですか?

A)新型コロナウイルスの影響を過小評価して対策を軽視し、批判が高まっているためです。

C200807_2.jpg

ルカシェンコ大統領は、「ウォッカを飲めばコロナに効果がある」、「アイスリンクにウイルスはいない」といった科学的根拠のまったくない主張を展開し、都市封鎖などの措置はとらず、感染拡大に歯止めがかかっていません。
先月下旬には、「実は自らも感染していたが、症状はなかった」と突然発表し、ひんしゅくを買いました。

Q)そうなると、再選は難しいのでしょうか?

A)有力な対立候補が排除されたため、そこまでではなく、大統領の優位は動いていません。
ただ、ここに来て注目を集めているのは、37歳の女性候補、チハノフスカヤ氏です。
政権を批判してきたブロガーの夫の立候補が認められず逮捕されたため、代わりに立候補し、大統領に対する批判を結集する受け皿となって支持を集めているのです。
ルカシェンコ大統領にとって選挙の目的は、できるだけ多くの票を得て権威を見せつけることにありますが、得票率が下がれば、その権威に影響を及ぼすおそれがあります。
さらに無視できないのが、隣国ロシアとの関係に亀裂が走っていることです。

Q)どういうことですか?

C200807_4.jpg

A)選挙戦終盤、ベラルーシの治安当局が自国内でロシアの民間軍事会社の30人あまりの身柄を拘束しました。
ルカシェンコ大統領は、ロシアが選挙に介入しようとしたとして非難し、最も緊密な同盟国ロシアとの関係をないがしろにするような行動に出ました。
これまでルカシェンコ大統領が強権的に振る舞うことができたのも、エネルギーをはじめ、経済的な恩恵を受けてきたロシアとの良好な関係が基盤にありました。
こうした関係が変化し、ベラルーシの体制が揺らぐことはないのか、ロシアと欧米のパワーバランスに影響は出ないのか、見ていく必要があります。

(安間 英夫 解説委員)


この委員の記事一覧はこちら

安間 英夫  解説委員

こちらもオススメ!