徴用をめぐる裁判で、韓国の裁判所は日本企業が所有する株式を差し押さえたことを日本側に伝える手続きを終えました。今後は差し押さえられた株式がいつ現金化されるかが焦点となります。出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。
Q1、こちらのイラストは時限爆弾ですか?
A1、時限爆弾のタイマーの針がひとつ進んだのが今の状況です。裁判所が差し押さえている株式を現金に換える「現金化」という「爆弾」が爆発すれば、日韓関係はまさに破綻といってよい状態に追い込まれることになります。
Q2、株式を現金に換えることがなぜ日韓関係の破綻につながるのですか?
A2、裁判所に差し押さえられたとはいえ、株式の所有権はまだ日本企業にあります。
しかしこの株式が売却され現金に換えられた時点で所有権は韓国側に移り、日本企業が実害を被ることになるからです。徴用をめぐる問題は、日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」というのが日本側の立場です。それにも関わらず日本企業が実害を被ることになれば、厳しい対抗措置を取ると日本政府は警告しています。
「やられたらやり返す」日韓関係はまさに泥沼の状態に陥るでしょう。
Q3、差し押さえられた株式が現金化される日は近いのでしょうか?
A3、まだいくつかの手続きが残っていますので、すぐにということではありません。ただ近づいてきていることは確かです。心配なのは、このところ日韓関係をさらに悪くするような事態がたて続けに起きていることです。輸出管理の強化をめぐる紛争がWTOに持ち込まれました。韓国の植物園には少女の像にひざまずく男性の像が設置されました。そして今月15日には韓国にとって日本の植民地支配から解放されて75年になる日がやってきます。韓国政府も表向きは「司法の判断には介入できない」としながらも、本音では現金化という事態は望んでいません。韓国政府が肩代わりするとか、基金を設立するといった案も検討されています。最悪の事態を招かないよう何とか知恵を絞ってもらいたいものです。
(出石 直 解説委員)
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