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藤井七段タイトル挑戦続く

高橋 俊雄  解説委員

初めてのタイトル挑戦が続く将棋の藤井聡太七段。9日、「棋聖戦」五番勝負の第3局で敗れ、史上最年少でのタイトル獲得は第4局以降に持ち越されました。

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Q)藤井七段、3連勝はなりませんでしたね。
A)
タイトル獲得への道を山に例えてみましたが、頂上に上りつめるのは大変なことです。
今回の棋聖戦、藤井七段は、渡辺明三冠との五番勝負に挑戦するまでに、予選と決勝トーナメントで合わせて10局を勝ち抜いています。さらに五番勝負でも第1局、第2局と勝ち、あと一歩で棋聖のタイトルを手にするところまで来ています。
第3局は渡辺三冠が意地を見せ、藤井七段の3連勝を阻止して逆転に望みをつなぎました。

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Q)ここまで登ってきた藤井七段の強さ、どんなところにあるのですか。
A)
詰め将棋で培った終盤の正確な読みに加え、序盤や中盤の組み立てにもスキがなくなってきたと言えます。
今回の五番勝負、藤井七段は、第1局と第2局で対照的な勝ち方をしています。第1局は終盤、16回連続で王手をかけられましたが、限られた時間の中、正確な指し手でこれをしのぎました。一方、第2局は中盤から次第に優位に立ち、一度も王手をかけさせないまま、渡辺三冠を投了に追い込んでいます。

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第3局も、敗れはしたものの持ち味の積極的な攻めを見せ、対局を見守っていた師匠の杉本昌隆八段も「タイトルのかかった一番とは思えない、踏み込みのよさだった」と評価していました。

Q)藤井七段は、「王位戦」にも出場していますよね。
A)
現在、棋聖戦と王位戦、2つのタイトル戦に並行して臨んでいます。王位戦は七番勝負で、先に4勝したほうが王位のタイトルを獲得します。今月1日と2日に行われた第1局で、藤井七段は、守りに定評がある木村一基王位に対して、終始攻め続けて快勝し、一歩リードする展開になっています。

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Q)藤井七段、頂上が見える段階に来ていますね。
A)
8つあるタイトルのうち1つでも獲得すれば、トップ棋士の証しとなり、藤井七段も大きな目標にしてきました。ここまで、棋聖戦と王位戦を合わせると3勝1敗と、格上のタイトルホルダーを相手に、堂々たる戦いぶりです。藤井七段のタイトル獲得がかかった次の対局は、今月16日の棋聖戦第4局。将棋界の歴史に残る好勝負を期待したいと思います。   

(高橋 俊雄 解説委員)


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