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在韓米軍の経費負担 どこまで

出石 直  解説委員

韓国に駐留しているアメリカ軍の経費負担をめぐる交渉が難航しています。
この交渉はこれから行われる日本とアメリカとの交渉にも大きな影響を与えるということです。出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。

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Q1、日本とアメリカとの交渉にも影響を与えるということですが。

A1、アメリカと韓国との交渉は、日本との交渉に先立って行われています。
ですから韓国との交渉の結果は、当然、日本との交渉にも反映されることになります。
まさにひとごとではありません。

Q2、韓国との交渉はどこまで進んでいるのですか?

A2、かなり難航しています。ことし2020年分の経費負担を決める交渉は、年内妥結を目指して去年9月に始まったのですが、年を越えてことしも半分が過ぎた今になってもまだ決着していないのです。

Q3、トランプ大統領は、かなり厳しい表情ですね。

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A3、韓国の負担が少なすぎるとご不満なのです。
去年は、およそ9億2000万ドルを韓国が負担することで決着しています。しかしトランプ大統領は「我々は遠く離れたお金持ちの国の防衛のために多額の費用を払っている」と強い不満をもらしています。

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先日、出版されたボルトン前大統領補佐官の回顧録によりますと、トランプ大統領は韓国に50億ドル、日本には80億ドルの負担を求め、「日本や韓国に駐留しているアメリカ軍をすべて撤退させるぞと脅して圧力をかけろ」と指示したということです。
本当にそう言ったのかどうかはわかりませんが、トランプ大統領の日頃の言動からすると十分ありうる話だと思います。実際、トランプ大統領は最近ドイツの国防予算が少なすぎるとして駐留しているアメリカ軍の一部を撤退させることを明らかにしています。

Q4、今後の交渉の見通しは?

A4、アメリカも徐々に要求を下げてきているようで、最終的には9.2億ドルと50億ドルの間のどこかの線で決着すると思います。しかしタフな実業家として知られたトランプ大統領は金勘定にはうるさい人物ですし、再選をかけた選挙も迫っています。そうは簡単に妥協しないでしょう。トランプ大統領が言う「お金持ちの国」は日本のことも指しています。
韓国とアメリカとの交渉がどうなるのか、その行方に注目です。

(出石 直 解説委員)


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