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軍事パレードと憲法改正国民投票強行へ 新型コロナで揺れるプーチン体制

石川 一洋  解説委員

ロシアではプーチン大統領が感染拡大で延期されていた軍事パレードと憲法改正の国民投票の実施を発表しました。石川一洋解説委員に聞きます。

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Q 新型コロナウイルスの感染の中で実施、大丈夫なのでしょうか

A プーチン大統領は政権の威信にかけて強行する構えです。対ドイツ戦勝記念の軍事パレードは今月24日、憲法改正の国民投票は来月1日に実施することになりました。しかし感染の状況は予断を許しません。

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ロシア政府の発表では3日一日の新たな感染者は8536人、ピーク時よりは減少しています。ただ感染の中心が首都モスクワから地方に移行しています。全体の6割を超えていたモスクワは2000人を切るまで減少しました。しかし医療体制の弱いモスクワ以外の地方は6000人台と高止まりのままです。

Q 感染防止の対策はどうするのですか?

A 軍事パレードでは参加者全員に、国民投票でも投票所に立ち会う人など関係者にPCR検査をして陰性を確認するとしています。

Q なぜ今強行するのでしょうか?

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A いわば見切り発車です。感染防止のため経済活動を厳しく制限してきました。しかし国民の収入が減り、もはや限界、プーチン大統領の支持率が落ちて、政権の基盤が揺らいでいるのです。経済活動を段階的に再開させる中で、軍事パレードをウイルスとの戦いに勝つ象徴、そして改正憲法では感染症などから国民を守る「社会的な国家」の性格を強化するとのスローガンを掲げ、感染症への戦いで逆に国民をまとめる戦略です。
ただ政権内部でもプーチン大統領の求心力が低下する兆しが見えています。
感染防止でも大統領でなくモスクワのソビャーニン市長が最前線に立ちました。モスクワから地方に医療支援隊が送られ、ここ一か月で感染抑止ができるのか、重みが増しています。

Q 国民はどのように見ているのですか

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A 政権全体に突き放した、冷めた見方をしています。軍事パレードや憲法改正よりも、感染を収束させ、収入を元に戻してほしいと思っているでしょう。もう延期はできません。大統領としては国民投票での圧倒的な支持で信任を得たいところでしょうが、感染の状況によっては意外に多くの政権批判としての反対票が出る可能性もあります。

(石川 一洋 解説委員)


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