新型コロナウイルスの感染拡大を受けて。中国で通貨のデジタル化いわゆるデジタル人民元の開発が加速しています。神子田解説委員です。
Q 神子田さん、そもそもデジタル通貨って、どういうものなんですか?
A 中央銀行が、紙幣や硬貨を電子データの形にして発行したものを銀行のATMで、あるいはネットを通じて、スマートフォンに入れて持ち歩けるようにするものです。これまでのキャッシュレス決済、〇〇ペイなどでは、お金を支払う際に、取引の情報が、決済サービスを提供している事業者や銀行にネットを通じて送られて資金が動くに対し、デジタル通貨はいったん現金の電子データをスマホの中に取り込んでしまえば、あとはネットを介する必要がありません。スマホ同士を近づけることでお金のやりとりができますし、ネットを介さないでよいため、災害などで通信が途絶えても利用できます。
Q それが新型コロナウイルスとどう関係があるのでしょうか?
A 日本でもいま感染防止の為に現金を使わないで決済をする店が増えていますが、中国では、もっとも感染が深刻だった地域で、お札を紫外線などで消毒し14日間放置した後、市中に流通させていました。通貨のデジタル化は、感染症対策にも有効だということで、開発を加速させているんです。
Q 開発はどこまで進んでいるんでしょうか?
A すでに国内の5か所で実証実験を通じてシステムの安定性などを検証している段階です。ただ、今のところは、地方政府の公務員に対する給与の一部をデジタル通貨で支払うなどごく限られた範囲にとどまっています。
Q 導入はいつ頃になるんですか?
A 先週中国人民銀行の易綱総裁は、二年後に北京で開かれる冬季五輪の会場でも実証実験を進めていることを明らかにし、北京五輪の開催時期を念頭に準備を進めていることを示唆しました。デジタル通貨をめぐっては、日本や欧州など6つの中央銀行も共同研究を進めていますが、サイバー攻撃への備えや、決済データを改ざんした不正な取引の温床となるおそれがあるなど課題も指摘されています。中国のデジタル通貨がどのような形で導入されるのか、注目していきたいと思います。
(神子田 章博 解説委員)
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