緊急事態宣言が全国で解除されたことで、博物館や映画館などの文化施設も再開が可能になってきました。しかし、現段階では、地域や業種、そして施設によって大きなばらつきが見られます。
比較的再開が早いのは、博物館や美術館です。すでに再開したところもありますし、多くの人が訪れる東京国立博物館や江戸東京博物館などは、緊急事態宣言の解除を受けて、6月2日の再開を予定しています。
ただ、再開にあたっては「感染防止」という新たなハードルがあります。事前予約制を取り入れるところや、県外からの来館について自粛を呼びかけているところもあるなど、これまでと同じ形で開館するとは限りません。
さらに、感染の第2波が懸念されている北九州市では、小倉城や文学館などは2日間、開いただけで、28日から再び臨時休館となってしまいました。
行きたい施設が開いているか、あるいは来館にあたって新たな変更点がないかどうか、事前に確認する必要があります。
映画館はすでに再開したところがあります。東京でも、休業要請の緩和がもう1段階進めば、再開が可能になります。
一方で、演劇などを上演する劇場や、コンサートホールなどは簡単ではありません。例えば、各地での公演をすべて中止している劇団四季は、現段階では6月下旬の再開を予定している演目がある一方で、年内の公演を中止する演目があったり、新作の開幕を来年に変更したりと、再開の見込みが演目ごとに異なっています。
劇場がすぐに再開できないのには、理由があります。演劇などの制作は「3密」にあたることが多く、感染が拡大するなか、準備や稽古が十分にできない状態が続いているからです。劇場自体は開けられるとしても、作品として完成していなければ、上演するわけにはいきません。また、海外の出演者やスタッフと組む作品の場合、関係者が来日できるかどうかが分からず、当初の予定どおりに制作を進めることができないという事情もあります。
文化の現場には、フリーランスの人や経営規模の小さな事業者が多く関わっています。これまでの中止や延期で、すでに経済的にも深刻な影響が出ています。十分な感染予防策をとりつつも、それぞれが全面的に再開できる日が少しでも早く来てほしいと思います。
(高橋 俊雄 解説委員)
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