ソフトバンクグループはことし3月期の決算を発表し、営業損益が、1兆3千億円を超える、過去最大の赤字になったことを明らかにしました。
その背景と今後の課題について、櫻井解説委員です。
Q 巨額の赤字の原因はなんですか?
A 孫正義社長が「AI革命を起こすような有望な企業に投資をしたい」とたちあげた、10兆円もの投資ファンドが、大幅な不振に陥ったことが、原因です。
中東のオイルマネーからも資金を得て、世界的にも大きな注目を集めてきたこのファンド。アメリカのシェアオフィス大手「ウィーワーク」の経営危機をはじめ、このところの金融市場の動揺も受けた、投資先の株価下落が、相次いでいます。
ファンドが設立されたのは世界経済が好調だった2017年。景気のピークで投資先の株を取得し、市場環境が悪化しても強気な投資姿勢をみせたことも、こうした事態を招いたとみられています。
Q 今後の見通しはどうなのでしょうか?
A2 新型コロナウィルスの影響もある中、投資先の業績がさらに悪化する懸念が残ります。宿泊や不動産といった、影響が大きそうな業種の企業が、複数あることも、不安材料です。孫社長も決算発表の会見で今後、損失が拡大する可能性を認め、「用心深く、安全運転をしていきたい」と強調しました。
Q3 となると、具体的には、どう、たて直しをはかっていくのでしょうか。
A3 はい。カギとなるのは、かつてない業績の悪化で、あらためて、懸念されている財務体質を改善できるかです。このため1年以内に、最大で4兆5千億円の資産を売却し、負債を減らすと約束しています。ソフトバンクといえば子会社が手掛ける携帯電話事業で知られていますが、中国のネット通販最大手・アリババグループや、アメリカの携帯大手の株式も持っています。まずは約束どおり、資産売却を実行し、守りを固められるかが問われています。
「ITバブル崩壊のときのどん底にくらべれば、今は余裕でがけをのぞきこんでいる状況だ」と、会見では強気な姿勢もみせた孫社長。逆風が続く中、課題を克服し、業績をたて直すことができるのか、今後に、注目したいと思います。
(櫻井 玲子 解説委員)
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