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「新型コロナウィルス 高まる新興国経済リスク」(ここに注目!)

櫻井 玲子  解説委員

新型コロナウィルスの感染拡大で、経済面への打撃も広がる中、先進国以上に、新興国への影響も心配されています。櫻井解説委員です。

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Q こちらのイラスト、新興国からおカネが羽根をつけて逃げ出していますね。

A はい。世界中の投資家が、先行きへの不安から、手元に資金を置いておこうと、新興国から巨額の資金を引き揚げているんです。
ブラジル、インドネシア、ロシア、トルコといった国の通貨、株や債券を売って、基軸通貨であるアメリカドルを買う動きが続いています。
新型コロナウィルスの感染拡大以降、日本円にして9兆円以上もの資金が、一気に、引き揚げられているということです。
2008年のリーマンショックのときとくらべても、2倍以上の速さで資金が流出していることになります。
しかも、新興国の悩み、この資金流出にとどまらないんです。

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Q どういうことですか?

A 新興国の中でもブラジルやロシア、インドネシアといった産油国や資源国は、収入源となる原油や資源の世界的な需要が減り、原油の価格がこの数週間で半分以下になるような状況に直面しています。
これまで出回っていたおカネが急に消えたのに加え、輸出で海外から得ていた収入も細ってしまう。まさに、弱り目にたたり目、といったところです。
事態が長期化すれば、海外からの借金に対する返済能力が懸念される国への信用不安が拡大し、本格的な経済危機へとつながる可能性もあります。

Q 新興国の経済が悪くなれば、世界全体にも大きな影響が出ますよね。

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A はい。懸念されるのは、かつてのアジア通貨危機のように、経済基盤の弱い国の一つから起きた危機が、次々とほかの国に飛び火し、世界全体の金融市場にさらに悪影響を及ぼすような事態を招くことです。
世界180か国以上が加盟するIMF・国際通貨基金は新型コロナウィルスで困っている国のための緊急融資枠を設け、迅速に支援を行うとしています。
今は、日本をはじめとする先進各国もそれぞれに危機と向き合う中、ほかの国に目を向ける余裕を失いがちです。新興国それにIMFとも連携し、影響を最小限にとどめる努力を尽くしてほしいと思います。

(櫻井 玲子 解説委員)

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