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「『一斉休校』新たな助成金制度とは?」(ここに注目!)

竹田 忠  解説委員

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため
安倍総理大臣が全国の小中学校などに要請している臨時休校の期間が
きょうから始まります。
突然、学校に行けなくなったこどもの世話をするため、
仕事を休まざるを得ない保護者のために
政府は新たな助成金制度を発足させる準備を急いでいます。
竹田忠(たけだ・ただし)解説委員に聞きます。

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Q①竹田さん、これは働く親にとっては、切実な問題ですね?

ホントにそうだと思います。
そもそもなぜこういう新たな制度が必要かというと、
本来なら、こういう時の頼みである「休業手当」が、
この場合はもらえないためなんです。

Q②休業手当がもらえない、というのはなぜですか?

休業手当というのは、
会社側の都合で、労働者が休む場合は、
会社は平均賃金の60%以上を払う、という制度なんです。

たとえば、どういう場合が対象になるかというと、
今、政府は、発熱などの風邪の症状がある人は、念のため、
会社を休むように呼び掛けています。
これを受けて、会社が実際に熱のある社員を休ませれば
それは会社がそうするよう求めているわけですから、休む人には休業手当が出ます。

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ところが、今回の場合は親が自分のこどものために休もうとしているわけで、
別に会社が求めていることではありませんので
会社は休業手当を払わなくていい、という解釈になるわけです。

Q③でも、どちらも、もともとは政府の呼びかけがもとになっているのに、対応が違うんですか?

そこはやっぱり釈然としませんよね。
なので、今回は、新たに政府が助成金制度を作って会社側に一定の補助を出すので、
会社は、休む親たちに賃金を出してください、という話しなんです。

Q④どれくらいもらえるんですか?

休業手当は、先ほど触れたようにもらえるのは平均賃金の60%以上ですが、
この新たな制度では、もっと水準を上げて、「通常の賃金」、
つまり、働いている時と同じ賃金を出すようにしてください、
ということを求める方針でして、今、制度の詳細を詰めているところです。

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Q⑤そうすれば親たちも安心して休みやすくなる?

そうだと思います。ただ、もう一つ重要なことが
安倍総理大臣が先日の会見で強調したセリフにあります。
それは、「正規・非正規を問わず、しっかり手当する」。これです。

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この言葉通り、今回の新たな手当は、
正規でも非正規でも、同じように適用される予定です。
しかし、そもそも、非正規の人は、お金が出ようが出まいが、
休みたくてもなかなか休ませてもらえない、という厳しい現実が
以前から指摘されています。
これでは弱い立場の人が、さらに困ってしまう、ということになりかねない。
「正規・非正規を問わず」という言葉がチャンと実現されるよう、
政府は「万全の対応」をとってほしいと思います。

※ちなみに「万全の対応」という言葉も、総理が同じ会見で使った言葉です。

(竹田 忠 解説委員)


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